岸田文雄首相は東京証券取引所の大納会に出席した。あいさつの詳報は以下の通り。
本日は日本取引所グループ大納会にお招きをいただきまして誠にありがとうございます。

本年の締めくくりとしてこの1年間、毎週放送を楽しみに見させていただきました大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の脚本を書かれた三谷幸喜さんとご一緒させていただくことができ大変うれしく思っております。

岸田政権が掲げる「新しい資本主義」は様々な社会課題を成長のエンジンに転換し官民連携して力強い成長を実現することで持続可能で包摂的な経済社会を作り上げていくための包括的な政策パッケージです。

なかでも今年11月に決定いたしましたスタートアップ育成計画と資産所得倍増プランは重要な柱であり実行には資本市場、そして市場に関わる皆様の力が欠かせないと思っています。

日本経済の持続的成長そして日本が直面する様々な社会課題の解決を担う主役はスタートアップであると考えており、来年はその育成に一段と力を入れていきたいと思っています。

近年、卒業後にスタートアップを起業する大学生や社会的課題の解決に強い志を持つ若い起業家たちが増えてきており、こうした前向きな動きを、変化を、後押しするためスタートアップ育成に向けた1兆円の予算措置を講じました。

あわせてスタートアップへの投資額を5年間で10倍、およそ10兆円規模に増やすことを視野に5カ年計画を策定いたしました。また保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合の優遇税制を創設いたします。

スタートアップにとって東証は上場により成長資金を広く集め、市場の中でさらに成長する機会を提供してくれる重要な場であると思います。

日本からユニコーン企業が次々と輩出されていくよう新規上場プロセスや上場審査のあり方を見直すなど政府とともに市場改革を進めていただきたいと期待をしております。

こうした取り組みによりスタートアップに資金が円滑に供給される資本市場、そして若者がちゅうちょなくスタートアップに飛び込んでいけるスタートアップエコシステムを皆様と共に作り上げていきたいと思っています。

同時に来年は資産所得倍増プラン元年として貯蓄から投資へのシフトを大胆、抜本的に進めていきます。日本の家計金融資産2000兆円の半分以上が預金、現金で保有されています。

結果、20年間で米国では家計金融資産が3倍、英国では2.3倍になった一方、日本では1.4倍にとどまっています。ここに日本の家計金融資産が大きく拡大することができるポテンシャルがあると考えており資産から投資への動きを幅広い層に広げることが重要であると考えています。

このためNISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充、恒久化とiDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革を行うとともに顧客本位の業務運営、金融経済教育の充実、消費者が信頼できるアドバイスの提供の推進といった総合的な取り組みを進めていきます。

特にNISAについては長年の課題であった制度の恒久化を実現し金融商品から得た利益が非課税となる期間を無期限とするほか年間投資額や非課税保有限度額の上限を大幅に拡大いたします。

これによってより多くの国民のより多くの投資がより長期間、非課税となります。現在、NISAの口座数は1700万口座、累計の買い付け額は28兆円です。政府はこれを5年間で倍増させることを目指していきます。実現の上でも東証の果たす役割は重要だと思います。

東証が国民から信頼され投資家にとって魅力ある市場となるよう市場改革やコーポレートガバナンスの向上、開示の充実、上場商品の多様化といった取り組みをしっかりと進めていただきたいと思っております。

官民一体となって個人の証券投資を盛り上げていきましょう。

来年は「新しい資本主義」を本格起動させていく年です。北条義時が新しい武士の時代を築いた、切り開いたごとく多くの政策課題はありますが一つ一つ乗り越えて成長と分配の好循環を実現し新しい日本を切り開いていく決意です。

新しい年が日本経済そして国民の皆様にとって良い年となるよう全力で政策課題に取り組んで参ります。皆様、そして三谷さん今日は誠にありがとうございました。

日本経済新聞
2022年12月30日 21:45
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA302Q40Q2A231C2000000/