性的少数者(LGBTQ)や在日コリアン、アイヌ民族らを差別する発言を繰り返してきた杉田水脈みお総務政務官が2日、松本剛明総務相に指示され、ようやく一部を謝罪、撤回した。しかし、当事者からは「本心から反省しているか」と疑問の声が上がった。(梅野光春、奥野斐)

◆アイヌ民族や在日コリアン、収まらぬ怒り

 2日の参院予算委員会。杉田氏は神妙な様子で「過去の配慮を欠いた表現を反省し、傷つかれた方々に謝罪し、取り消す」と答弁した。用意した紙に目を落とし、松本総務相が代わりに答弁するシーンもあった。
 「許せない。撤回しても心は変わってないだろう」。東京を拠点にアイヌ権利回復運動を展開し、今は北海道白老町に住むアイヌ民族の宇梶静江さん(89)の怒りは収まらない。
 「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」とやゆする投稿は2016年2月。宇梶さんは、国会で取り上げられた先月30日に初めて知った。「汚された気持ち。こんな人が国を治めているとは情けない」
 在日2世の映画監督金聖雄キムソンウンさん(59)=東京都武蔵野市=は「杉田氏のように公的な立場にいる人が堂々と差別的な発言をするのを見て、『言ってもいいんだ』と捉える風潮が広まったと思う」と政治家の差別発言を危惧。今回の撤回と謝罪は「どうやったら批判を切り抜けられるか、という政権側の思惑が透けて見える」と突き放す。

 杉田氏が性的少数者について「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」とつづった寄稿は18年、月刊誌「新潮45」8月号に掲載。その直後、東京・永田町の自民党本部前で抗議集会が開かれた。
 集会に参加したゲイで当事者団体「同性パートナーシップ・ネット」共同代表の池田宏さん(63)は「4年以上、謝罪・撤回しなかった杉田氏の人格や良識を疑う。自分の子どもや家族に当事者がいる可能性を考えたことがあるのか」。

◆「上から言われて謝るのは非常に不誠実」

 レズビアンで「LGBT法連合会」理事の五十嵐ゆりさん(49)は「抗議の声は無視し、上から言われて謝るというのは非常に不誠実」と指弾。「明らかなジェンダー差別、人権侵害を繰り返してきた。当事者の実態や困難を聞く耳を持つべきだ」と杉田氏に注文する。
 トランスジェンダー当事者で医療の課題解消に向けて活動する岩井紀穂かずほさん(52)=埼玉県草加市=は「撤回しても(発言などが)なかったことにはならない。少なくとも政務官は辞めるべきだ」と強調した。

東京新聞
2022年12月2日 20時35分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/217565