政治資金を所管する寺田稔総務相(64)の関係政治団体「寺田稔竹原後援会」で故人が会計責任者を務めていた問題を巡り、同後援会が発行した「寺田稔」宛の領収書に記された宛名の筆跡が11枚にわたって酷似しており、寺田氏側が領収書の宛名を記入していた可能性が極めて高いことが、「 週刊文春 」の取材でわかった。民法上の不法行為にあたる疑いや、総務省の指針に反している疑いがある。

 また、寺田氏は国会の場で「寺田稔」宛の領収書について「お店が、時間的な暇があれば、書き直して頂いている」旨を答弁していたが、実際には、店ではなく、寺田氏側が領収書を書き直していた可能性が強まった。この国会答弁も虚偽だった疑いがある。

 寺田氏は元財務官僚で、岸田文雄首相率いる宏池会の創設者・池田勇人元首相の孫娘・慶子氏と結婚。今年8月の内閣改造では、首相の右腕として重要閣僚である総務相に起用された。

「週刊文春」は 10月6日発売号 などで、慶子氏が代表の政治団体「以正会」の人件費を巡る“脱税疑惑”を報じてきた。 10月20日発売号 では、大臣秘書官・迫田誠氏への取材音声などを基に、秘書らに対する報酬の“上乗せ金”を、「以正会」経由で支払っていたことは源泉徴収を避ける目的があった旨を指摘(寺田氏は疑惑を否定)。さらに、 10月27日発売号 では、関係政治団体の「寺田稔竹原後援会」が故人を会計責任者とし、収支報告を行っていた問題を報道。 11月2日発売号 では、同後援会が「寺田稔」宛の領収書を発行しており、実質的に寺田事務所と一体となって運営されていた疑いを報じた。

 寺田氏は11月1日の参院総務委員会で、「寺田稔」宛の領収書について、次のように述べていた。

「お店がですね、この支払いを受けて領収書を出すとき、竹原後援会と、適切に書くのがもちろん望ましいわけでございます。(略)時間的な暇があれば、後援会宛に書き直して頂いているというふうにお伺いしております」

 だが、情報公開請求で入手した「寺田稔」宛の領収書を精査したところ、異なる店や郵便局で発行されたにもかかわらず、筆跡が酷似した領収書が少なくとも11枚存在することがわかった。

 11枚の領収書は、「寺」の第2画目が左下に払われていることや、「稔」の第1画目が真横に書かれていること、「心」部分のはね方の特徴などが一致しており、全て同一人物による筆跡と見られる。

 こうしたことから、寺田氏側が領収書の宛名を「寺田稔」と記入していた疑いが極めて強い。

“領収書偽造”は民法上の不法行為にあたる疑い
 民法486条によれば、領収書について、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる」と定めており、受け取った側が宛名を記入する行為は不法行為にあたる疑いがある。

 寺田氏が大臣を務める総務省政治資金課の国会議員関係政治団体の手引きにおいても、領収書の宛名は〈発行者において記載すべき〉と定められており、受け取った側が宛名を記入する行為は総務省の指針にも反している疑いがある。

 寺田事務所に事実関係の確認を求めたところ、以下のように回答した。

「『寺田稔竹原後援会』の事務処理についての見解は、国会答弁等で申し上げているとおりです」

 寺田氏が「自身は一切関与しておらず、別団体である」などと主張してきた「寺田稔竹原後援会」。だが、領収書の宛名が「寺田稔」だったばかりか、寺田氏側でその宛名を記入していた可能性が極めて高い。政治資金を所管する大臣として、どのような説明をするのか、注目される。

 11月9日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および11月10日(木)発売の「週刊文春」では、寺田氏の新たな資産公開法違反疑惑や、「寺田稔竹原後援会」の代表者とされていた人物の証言などについても詳報している。

文春オンライン
11/8(火) 11:12
https://news.yahoo.co.jp/articles/0e92b49277ab23273efafe8046a41c5efbe58b49