本気で旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の解散命令を請求するつもりなのか──。24日の衆参予算委員会の集中審議に出席した岸田首相。解決に向けた気概は全く感じられなかった。

 岸田首相は宗教法人法上の解散命令請求の要件として先週、民法の「不法行為」と「使用者責任」も含まれるとの見解に転じた。その上で、24日の衆院予算委で教団の民法上の法令違反は22件(不法行為2件、使用者責任20件)に上ると明らかにした。政府が22件も確認すれば、すぐにでも解散命令は請求できそうだが、岸田首相は“ブレーキ”を踏んでみせた。

■「22件の法令違反は要件満たさず」

「過去に解散を命令した事例と比較して解散事由に該当すると十分に認められるものではない。だからこそ、報告徴収・質問権を行使することでより事実を積み上げることが必要だ」

 22件の法令違反では不十分との認識を示したのだ。これは重大な答弁だ。もし、質問権に基づく「調査」で新たな事実が積み上がらなければ、「請求しない」と言っているに等しい。

 質問した立憲民主党の長妻昭政調会長は「責任が明確なのは判決だ。(政府の調査では)相手に強制力なく聞く(質問する)わけだから、新たな事実がバンバン出てくるわけではない」と指摘したが、その通り。調査の完了時期を明言しない岸田首相に長妻氏が「本気を出してほしい」と注文すると、岸田首相は「そのことで本気度がないというのは同意できない」と色をなした。

「岸田首相は統一教会問題の深刻さを理解しているのか。宗教法人格を維持させ、税制上の優遇を与え続けるのは補助金を出しているのと同じです。岸田首相は請求の要件に組織性、悪質性、継続性を挙げています。統一教会は1980年代から社会問題化しており、継続性は、解散命令が出されたオウム真理教と明覚寺の2つの前例よりも満たされていると言えます。請求に時間をかけ、被害拡大を許していては、本気度がないと言われて当然です」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)

 全国霊感商法対策弁護士連絡会の木村壮弁護士は24日、参考人として出席した参院予算委で「解散要件を満たしている」と強調。岸田首相が「できない言い訳」を繰り返せば、教団の思う壺である。

日刊ゲンダイ
10/25(火) 13:30
https://news.yahoo.co.jp/articles/3996ea574b7af357ef21c6625fb2bbd72a8358c3