どこか他人事のような答弁だった。17日の衆院予算委員会で、2023年4月8日までの任期が迫った日銀の黒田東彦総裁(77)の後任に対する考えを問われた岸田文雄首相(65)のことだ。

【写真】なんと月額531万円!「日本一家賃が高いマンション」はどこにある?

 後任人事について岸田首相は「(金融政策の)予見性、政府と日銀との連携をしっかり念頭に置き、重視しながら考えていかなければならない」「来年4月の時点で最もふさわしい人物を選ばなければならない」などと答弁。

 だが、国民が求めているのは「来年4月の時点でふさわしい人」ではなく、急速に進む円安と物価高に対して有効な具体策を「今、打ち出すことのできる人」だろう。

 黒田総裁が2013年から始めた「異次元緩和」、「約500兆円に上る国債の爆買い」「約50兆円のETF(株価連動投資信託)買い入れ」……などによって、日本は欧米のような思い切った利上げができず、金利差の拡大によって「円安」はどんどん進行。

 その上、ロシアのウクライナ侵攻という特殊要因も加わり、輸入品を中心とする物価高に国民生活は青息吐息の状況になりつつある。「今」こそ、「通貨の番人」「物価の番人」である中央銀行、つまり「日銀」の出番であり、岸田首相が言うように「来年4月」まで、のんびり構えている場合ではないのだ。

この日の予算委で黒田総裁も…

 黒田総裁も黒田総裁だ。この日の予算委で、現在の物価高や今後の推移について問われると、「エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、本年末にかけて上昇率を高める可能性が高い」「主として国際商品市況や為替円安の影響によって輸入品価格が上昇していることが影響している」などと答えていたからだ。

「本年末にかけて上昇率を高める可能性が高い」「為替円安の影響によって輸入品価格が上昇している」のは、もはや誰でも分かっている。国民が聞きたいのは、その現況を踏まえた上で、中央銀行として有効な対策を打つ気があるのか、ないのか。講じるのであれば、いつ、どのような対策なのか。中央銀行のトップとしての明確な考えだろう。

 岸田首相や黒田総裁の答弁を聞いていると、2人そろって「今は厳しいけれど仕方ないよね」「てへぺろ」みたいな雰囲気だから呆気に取られてしまう。

日刊ゲンダイ
10/17(月) 16:25
https://news.yahoo.co.jp/articles/2c635a42e143fd9d46e6724ca6f63cf8af9ced3e