岸田政権が2024年秋までに現行の保険証を原則廃止するとブチ上げ、マイナンバーカード取得が事実上、義務化されてしまった。河野デジタル相は14日の閣議後、保険証とマイナカードが一体化した「マイナ保険証」への切り替えについて、「分かりやすい広報をしっかりとやりながら進める」と意欲を見せたが、医療現場からは怒りの声が上がっている。

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 マイナンバー制度の医療分野での活用について、厚労省は14年5月に「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」を設置。約1年半にわたり議論してきた。計10回の会合を経て15年12月に報告書を取りまとめ、次の留意事項を明記している。

〈すべての保険医療機関と保険薬局で、個人番号カードによるオンライン資格確認の対応がとられ、個人番号カードが国民すべてに普及するまでの間は、現行の被保険者証も必要であり、保険者においては被保険者証を交付する必要がある〉

 注目すべきは、検討会がマイナカードの医療分野での活用の前提条件に「全ての医療機関・薬局でのオンライン資格確認の対応」「全国民によるカード取得」を掲げていること。つまり、カード普及のために保険証廃止に目をつけた政府のやり方は、検討会の提言とはアベコベ。前提条件を無視した“禁じ手”なのだ。

■「河野大臣の手法は非常に拙速」

 面目を潰された格好の元検討会メンバーは何を思うのか。委員を務めた日本医師会の石川広己前常任理事に聞いた。

 ──マイナカード普及ありきの保険証廃止は本末転倒では。

「ご指摘の通り、検討会の結論とは逆行しています。河野大臣の手法なのでしょうが、非常に拙速だと思います」

 ──マイナカードと保険証の一体化については。

「マイナンバー制度の導入自体に反対ではありませんが、医療分野での活用には、病歴や健診結果などの極めて機微な個人情報が漏れてしまう懸念を抱いていました。そこで検討会では、個人情報保護を最優先することや、診療や検査などにマイナンバーが用いられないことを条件に議論を進めてきました。個人情報保護はかなり進んだと思いますが、欧州の一般データ保護規則(GDPR)に比べ、まだまだ劣っています」

「補助金では到底足りない」と現場の医師も不満爆発

──政府は来年度から医療機関や薬局に対し、「マイナ保険証」の本人確認を行う顔認証付きカードリーダーの導入を義務付けました。事業規模によって21万~210万円を上限に補助が出ますが。

「恐らく補助金だけでは足りません。カードリーダーや周辺機器などの費用は賄えるかもしれませんが、工事を請け負った業者への支払いなどは含まれていないでしょう。かなり大ざっぱな見積もりに基づいていると思います。円安や物価高の影響で、導入期限の来年4月までに補助金の倍近く負担しなければいけないという声も聞かれます。現場の医師は総スカンですし、怒りすら覚えています」

 現場は混乱し、相当な不満を抱いているようだ。河野は「突破力がある」ともてはやされているが、やっていることは今までの議論の“ちゃぶ台返し”。医師も患者も全国民がいい迷惑である。

日刊ゲンダイ
10/16(日) 9:06
https://news.yahoo.co.jp/articles/b36470cd2624d056091b8c38c08e849306b9cdff