岸田内閣の支持率下落が止まらず、危険水域に突入しつつある中で始まった臨時国会。旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題と真剣に向き合おうとしない岸田首相は、ますます国民から見放されることになりそうだ。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会は11日、旧統一教会の解散命令を請求するよう国に申し入れた。国が裁判所に請求し、裁判所が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害する行為をした」と認めると解散命令が出される。また、今国会で“共闘”する立憲民主党と日本維新の会も、被害者救済法案を近く国会に提出する方針だ。

 ところが政府・与党の動きは鈍い。解散命令について、松野官房長官も岸田首相も「判例も踏まえて慎重に判断する必要がある」と繰り返すばかりだ。旧統一教会との接点が相次いで発覚し、フザケた説明で国民の反感を買っている山際経済再生相をクビにする気配もない。

「岸田首相は統一教会との関係を断ち切ると宣言し、関わりのある大臣は交代させると大見えを切って内閣改造に踏み切ったのだから、さっさと山際大臣を更迭すればいいのです。解散命令だって、司法の判断に任せればいいじゃないですか。この問題に本気で取り組む姿勢を見せれば、支持率が回復する可能性もあるのに、なぜ、できないのか。それどころか、統一教会の問題を追及されたくないから、法案数を絞ったり外遊日程を詰め込んだりして、国会審議から逃げている。のらりくらりと時間稼ぎをすればいいとタカをくくっているのなら、国民をバカにしています」(政治ジャーナリスト・角谷浩一氏)

支持率回復の切り札なのに…本人は“外交の岸田”で点数を稼ぎたい

 来週からは予算委員会が始まる。旧統一教会や物価高対策など、早急に議論すべきことは山ほどあり、野党は衆参3日間ずつの開催を要求していたが、与党側は2日間ずつで押し切った。そもそも、岸田首相が21日からオーストラリアを訪問する予定を入れたため、予算委を開催できる日数は限られている。

 しかも、岸田首相がオーストラリア訪問を決めたのは3日に臨時国会がスタートした後だ。予算委は首相と全閣僚が出席する。財務相の海外出張で今週いっぱいは予算委が開けない“開店休業”状態だというのに、来週も岸田首相が海外出張を入れて十分な日程を確保できない。岸田首相は補正予算の審議が始まる11月にもASEANやG20、APECなどへの出席を予定している。

「安倍政権で外相を長く務めた岸田総理は外交に自信があり、“外交の岸田”で点数を稼げると考えている。安倍元総理が地球儀俯瞰外交を掲げて海外を飛び回り、“外交の安倍”と支持されたことが念頭にあるのでしょう。しかし、本当に外交が得意なのかは疑問です。国葬の弔問外交で海外要人との会談を精力的にこなしても、ちっとも話題にならなかった。むしろ、この時期に外遊三昧は批判の対象になる可能性がある。政務秘書官に起用した長男と夫人を伴っての外遊となると、『国会そっちのけで、政府専用機で家族旅行か!』などと言われかねません」(自民党関係者)

世論が求めているのは、外交よりも物価高や旧統一教会の対策だ。解散命令を請求するなど、旧統一教会問題でリーダーシップを発揮することが支持率回復の切り札なのに、せっかくのチャンスをみすみす逃している岸田首相は、本当に政治センスがない。

 今国会でジリ貧は確実だ。

日刊ゲンダイ
22/10/14 06:00
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