「本の表紙だけ変わっても、中身が変わらなくちゃダメだ」。かつて竹下登首相の後継として白羽の矢が立った自民党の伊東正義総務会長は、こんな言葉を用いて固辞した。

 こちらの「表紙」を変えないという決断は吉と出るのだろうか。7月の参院選で敗北を喫した立憲民主党のことである。立民内では、泉健太代表の辞任論も出たが、最終的に続投を認めた。泉氏が変えたのは、自らを支える党執行部の陣容だった。

 幹事長に岡田克也・元外相(69)、国会対策委員長には安住淳・元財務相(60)、政調会長には長妻昭・元厚生労働相(62)を起用した。いずれも民主党などで、同じポストを務めた経験があり、「再登板」となった。

泉氏は9月21日放送のBS番組で、岡田氏らの起用について、「先輩たちが権力をふるうために戻ってきたのではない。教えを請うために戻ってきてもらったが、言うことを全部聞くわけではない」と説明した。しかし、他党だけでなく、立民内からも「新味がない」「先祖返り」などの批判が出ている。

今回の人事を野党の「ご意見番」はどう見ているのか。立民の源流である民主党で幹事長を務めた輿石東・元参院副議長(86)に聞くと、「民主党政権時代に要職を務めたベテランを配した。泉氏は『最後の賭け』に出たのだろう」と解説した上で、「この布陣で失敗は許されない。また失敗を繰り返せば、立民という政党自体が消滅する」と語った。

 輿石氏は、後輩たちに向けて、「国会戦術では『抵抗型』を選んだかと思えば、今度は『提案型』を志向する。こんなことを繰り返せば、国民は『立ち位置がぶれる野党』という印象を抱く。新執行部は、与党とは『ここが違う』という立ち位置を明確にすべきだ」と助言する。

参院選比例選では、維新が立民の得票を上回り、「野党第1党」となった。立民は瀬戸際に立たされているといっても過言ではない。「表紙」を変えない立民は、「中身」を変えることは出来るのか。臨時国会はその試金石ともなる。

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