安倍晋三元首相の国葬が27日に迫る中、いまだに参列者数が把握できないなど政府が準備に苦慮している。海外の現職首脳の参列が想定より少ないとみられ、「弔問外交」の意義が薄れる懸念も浮上。招待基準に疑問の声も上がり、反発がさらに広がりかねない事態に政府内には焦りの色がにじむ。

 内閣府によると、案内状は今月9日前後から国会議員や都道府県知事、各界代表者など約6千人に発送された。ただ、期日の13日を過ぎても出欠の返信が思うように集まらず、官邸スタッフは「参列者の数すらなかなか確定できない」といら立つ。

 その案内状を巡っては、混乱ぶりが浮き彫りとなっている。当初予定された返信期日「8日」の上から修正テープが貼られ、「13日」と手書きで書き直されていた。修正箇所の写真がツイッターで拡散されて「お粗末」などと物議を醸し、内閣府は取材に対し「送迎バスの調整で集合時間が定まらず、期日を遅らせた」と説明した。

 「各界代表者」の招待基準にも戸惑いが広がる。安倍政権に批判的だった演出家の宮本亞門氏は、案内状が届いたとツイッターで明かし、「どうしてこれが僕に?」と投稿。内閣府関係者は「芸術分野で文部科学省の枠だろう」と話すが、宮本氏は「何かの間違いでしょう。政治家でもなく桜を見る会すら呼ばれたことがないのに。もちろん私は行きませんが」ともつぶやき、国葬への根強い不信が露呈する形になった。

 「弔問外交」に疑問符が付きかねない状況にもなりつつある。政府は現時点で米ハリス副大統領やカナダのトルドー首相らの参列を発表している。ただ、先進7カ国(G7)の首脳級は元職が目立ち、政府関係者は「現職が予想以上に少ない」と頭を抱える。

 さらに19日に開かれる英国・エリザベス女王の国葬も影響しそうだ。安倍氏の国葬出席を予定する要人が英国訪問を優先する可能性が取り沙汰されており、政府高官も「短期間に2カ国を訪れるのは物理的に難しいという国も出てくるかもしれない」と不安を漏らした。 (大坪拓也)

西日本新聞
9/18(日) 17:10
https://news.yahoo.co.jp/articles/478d98b0881669b57aae69ebc52872c624b25946