安倍晋三元首相の国葬をめぐって、岸田文雄首相は国会の閉会中審査で説明する意向を示しました。首相が閉会中審査に出席するのは異例です。批判の高まりに答えざるをえなくなりました。

内心の自由と弔意
 一番の問題は弔意の強制への懸念です。首相は8月31日の記者会見で、「国民に弔意を強制するものではない」と強調しました。国民に対して弔意の表明を求める決定も見送りました。しかし、国葬当日は各府省庁で弔旗を掲揚し、葬儀中の一定時刻に黙とうします。こう聞くと釈然としない人もいるでしょう。

 安倍氏の死に弔意を示すことも、示さないことも自由なはずです。2020年10月に行われた中曽根康弘元首相の「内閣・自民党合同葬」では、文部科学省が国立大に弔意表明を求める通知を出し、問題となりました。

 今回の国葬では世論が二分されていますが、反対が多いか、少ないかという問題ではありません。仮に反対が少数であっても、内心の自由が関わっているからです。

 安倍氏とも親しかった自民党のベテラン衆院議員は国葬の実施自体には賛成としつつ、「弔意を示すかどうかは国民一人一人が判断することだ。本当の保守は多様性を認める。一律に弔意を強制することは多様性を失わせる」と言います。

国会審議抜きで決めた
 国葬に関する規定を明記した法律はありません。国葬と決めたのは閣議決定でした。葬儀費用は国が全額負担します。それを国会審議抜きで決めたことになります。

 首相が閉会中審査に出席するのも、国会審議や議決を経るべきではなかったか、あるいは国葬に関する法律が必要だという批判が念頭にあるためです。

 誰ならば国葬とするかという基準もありません。首相は記者会見で、「総合的に時の政府が責任をもって判断をする」としか答えることができませんでした。

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