2022年9月1日 日本共産党幹部会委員長 志位 和夫

岸田政権による「国葬」の強行が憲法違反であることはいよいよ明瞭になった

 岸田文雄政権は、安倍晋三元首相の「国葬」を閣議決定し、9月27日に強行しようとしている。日本共産党は、7月14日、岸田首相が、安倍氏の「国葬」を行うことを発表したさいに、ただちに談話を発表し、「国葬」が、「国家として安倍氏の政治を賛美・礼賛することになる」とともに、憲法に保障された内心の自由を侵害して弔意の強制につながることが強く懸念されるとして、その中止を強く求めてきた。

 その後の岸田政権のこの問題に対する対応を通じて、「国葬」の強行が憲法違反であることが、いよいよ明瞭になっていることを厳しく批判しなければならない。

憲法14条「法の下の平等」に反する――国民の納得できる説明は何一つできず特別扱い

 第一に、「国葬」の強行は、憲法14条が規定する「法の下の平等」に反するということである。

 なぜ安倍元首相のみを特別扱いにして「国葬」を行うのか。岸田首相は、国民が納得できる説明を何一つしていない。首相は、昨日(8月31日)の会見でも、在任期間が8年8か月と「憲政史上最長」となったことなど従来の説明を繰り返すだけで、安倍氏の「国葬」を実施する合理的理由を示すことはできなかった。

 このことは、結局、時の内閣や政権党の政治的思惑・打算によって、特定の個人を「国葬」という特別扱いをすることにほかならない。これが憲法が規定する平等原則と相いれないことは明らかである。

憲法19条「思想及び良心の自由」に反する――「弔意を国全体としてあらわす」として「国民全体」に「弔意」を強制

 第二に、「国葬」の強行は、憲法19条が保障する「思想及び良心の自由」に反するということである。

 岸田首相は、8月10日の会見で、「国葬」は「故人に対する敬意と弔意を国全体としてあらわす儀式」だとのべた。わが国は、国民主権の国であり、ここでのべられている「国全体」とは「国民全体」ということになる。すなわち首相の発言は、「国葬」は「故人に対する敬意と弔意を国民全体としてあらわす儀式」だとのべていることにほかならない。これが憲法19条に違反した「弔意」の強制であることは明らかである。

 実際、8月31日、岸田首相は「葬儀委員長」として、「国葬」当日には、「哀悼の意を表するため、各府省においては、弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙とうすることとする」という決定を行っている。これは「各府省」と、そこで働く労働者に「弔意」を強制するものであって、絶対に許されない。こうした動きが、国の関係機関や地方自治体などに広がることが強く危惧される。

 くわえて、武道館に国会議員、地方自治体の首長など6000人もの参列者を集め、「国葬」として大々的に儀式を行うこと自体が、日本社会全体に同調を迫り、安倍氏への「弔意」を事実上強制する重大な危険をもつことは明らかである。

「国葬」は戦前の天皇中心の専制国家を支える儀式ーー憲法の国民主権や基本的人権に反し失効しており、実施の根拠法はない

 もともと「国葬」は、戦前、天皇や皇族とともに、天皇と国家に貢献したとされる「国家に偉勲ある者」に対して、天皇から「賜る」ものとして行われ、天皇中心の専制国家を支える儀式だった。その根拠とされた「国葬令」は、戦後、日本国憲法の国民主権や基本的人権に反するものとして失効した。政府も、失効の理由として、「制度全体として、現行憲法の精神とは相容れないような性格を有する」(2017年10月、内閣法制局)からだと認めざるをえなかった。

 現在「国葬」の根拠と基準を定めた法律は存在しない。岸田首相が持ち出している内閣府設置法は、他省庁と区別した内閣府の「所掌事務」の範囲を明確にする組織規範にすぎず、「国葬」実施の根拠法にならない。
法的根拠のない「国葬」を一片の「閣議決定」によって強行することは、法治主義を破壊し、「法の支配」を「人の支配」に代える暴挙である。

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