世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が、大阪市所有の施設を“ダミー会社”を通じて買い取り、拠点の施設にしていたことをAERAdot.で報じたが、鹿児島県でも信者を通じて国有地を手に入れた形になっている施設があることがわかった。そして、この鹿児島を地盤とする自民党の国会議員が、旧統一教会関連の会合に出席したり、イベントの顧問に名を連ねていたこともわかった。

「昔、農林水産省の関連施設があったはず。それが7、8年前に売りに出されていました。そこに旧統一教会がきたので驚きました」

 地元の近隣住民がそう話す建物は、鹿児島県姶良市にあった農水省の施設。そこが旧統一教会の施設になったのは2017年のことだったという。

 自治体が所有する施設が旧統一教会の施設に替わった例では、大阪市が総工費20億円をかけたドーム形の豪華施設が、ダミー会社を通じて旧統一教会に渡ったことをAERAdot.で報じた(“ダミー会社”通じて買い取り 旧統一教会の大阪の拠点はもともと市の施設 住民「今も不安」)

 今回は国が所管していた土地と建物が、旧統一教会に渡ったというのだ。

 その土地を不動産登記で確認すると、1978年に農水省が土地を取得し、79年に2階建て(延べ床面積約620平方メートル)の施設を建設したことがわかる。

 農水省の担当者によると、

「かつて農水省の福岡食糧事務所関連の分室がありました。施設が古くなり、任務を終えたとして2014年に九州財務局が一般競争入札を実施しました」

 とのこと。

 不動産登記を見ると、14年11月に鹿児島県内に住む会社経営の男性(Aさん)が、土地と建物を購入していた。そして17年9月に旧統一教会に転売。現在、「霧島家庭教会」となっており、インターネットの「世界平和統一家庭連合 地方教会ポータルサイト」でも紹介されている。

 Aさんに、土地・建物の購入、旧統一教会への売却の経緯などについて尋ねた。

「私が建築関係の仕事をしているので、学習塾をしたいという友人から、適した不動産がないか相談されていました。当時、国有地の一般競争入札という案内の看板を見たのがきっかけです。ここがいいのではないかと相談し、入札して買いました」

 不動産登記には「極度額4000万円」とあり、Aさんが金融機関から借り入れていることがわかる。

「入札時点で、建物はかなり古い物件とされていました。リフォーム費用も必要だとして4千万円を借りたのかと思う。農水省から買ったのはそれよりも安い金額だったはずです。その後、友人の事情で学習塾の計画が白紙になり、知人を通じて旧統一教会に売却しました」

 農水省は、旧統一教会へ国有地が転売されたことについて、どう考えているのだろうか。

 担当者は、

「一般競争入札ですので、一般的には暴力団などでなければどなたでも参加できます。特に(転売禁止などの)条項もなかったと思います。今、旧統一教会の教会だ、と言われても……」

 との回答を繰り返した。

 Aさんに旧統一教会との関係などについて聞くと、「それを言う必要があるのか!」などと立腹し、明確な回答は避けた。

 ただ、2017年1月の「VISION2020」という旧統一教会のニュースレターにこんな内容の記事が出ていた。

「地区認定神氏族メシヤ家庭教会認定式」が同月に開かれ、Aさんと妻の名前も掲載され、Aさんは認定式の最後に「感無量であり、氏族復帰、地域発展に寄与していきます」などと抱負を述べた、と報じられている。

 一方、Aさんは経営していた建設会社の関係で、地元の業界団体の役員などに名を連ねている「名士」でもある。

 鹿児島県を地盤とする自民党の保岡宏武衆院議員とも親交があるのか、20年7月に事務所を訪問している写真が保岡議員のホームページに掲載されていた。

 宏武氏は保岡興治元法相(故人)を父に持ち、その秘書を18年務めて政界入りした。

2に続く

AERA
8/26(金) 14:30
https://news.yahoo.co.jp/articles/09a72e2f49a37070c89c6d3f0c519cacbb01dd37