旧統一教会と岸一族と北朝鮮 この奇妙な三角関係をどう考えるべきか
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2022年7月30日 17時30分

 連日報道される政治家と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。教団所属の人物から選挙で支援を受けたと証言したのが、岸信夫防衛相だ。その関係を聞くと、兄の安倍晋三元首相が教団の友好団体にメッセージを寄せたのも「さもありなん」と思える。ただ、話はそこで終わらせられない。教団側は北朝鮮と親密な関係を築いてきたからだ。北を警戒すべき防衛相が、北と縁深い教団側とつながるのは問題ないのか。奇妙な三角関係をどう考えるべきか。(特別報道部・中山岳、中沢佳子)

◆岸一族と教団、関係の源流は「勝共連合」後押しした岸信介元首相

 「選挙というのは、まさに戦。手の内を明かすようなことはしたくない。適切に判断をし、対処したい」

 29日の会見でそう述べたのは岸防衛相だ。3日前には、教団に所属する人物から過去の選挙で支援を受けたと明かしたが、今後については曖昧に語った。
 兄の安倍氏の銃撃事件以降、同氏と旧統一教会の関係が取り沙汰されてきた。源流をたどると、教団の日本進出のほか、反共産主義を掲げる政治団体「国際勝共連合」の設立を冷戦下に後押しした祖父の故・岸信介元首相に行き着く。
 「反共」を名目に接点を持った岸一族と教団。両者の関係を考える上で気になる存在がある。共産主義を掲げて誕生した北朝鮮だ。教団は冷戦末期から同国とつながりを深めてきたからだ。
 教団のサイトによると、教祖の故・文鮮明氏は現在の北朝鮮・平安北道出身。1954年に韓国で教団を創立して信者を増やした一方、91年に北朝鮮側の招きに応じて電撃訪問。文氏は主席の金日成キムイルソン氏と会談し、南北の離散家族を捜す事業の推進などで合意した。
 その後、金正日キムジョンイル、金正恩キムジョンウン両氏ら後継指導者とも関係を築いた。2012年9月に文氏が死去した際は、正恩氏が「民族の和解と団結、国の統一と世界平和のために傾けた先生の努力と功績は長く伝えられる」と弔文を遺族に送った。一周忌を前にした13年8月にも追悼メッセージを出すなど、教団への配慮を見せた。

◆教団と北朝鮮、南北統一や資金面で相互にメリットか

 反共を掲げる教団が北朝鮮と接近したのはなぜか。文氏訪朝時に教団系の日刊紙「世界日報」記者だった元信者で、金沢大の仲正昌樹教授(思想史)は「文氏には祖国統一の理念があった。教会としても、訪朝目的は北朝鮮が共産主義を克服するために指導者に働きかけ、悔い改めさせるとの理屈が成り立つ」と語る。
 教団とつながりを持つことは北朝鮮にもメリットがあったとみる。「教会信者の経営する会社が北朝鮮に協力するなどし、利益をもたらした面はある」
 朝鮮半島問題の専門誌「コリア・レポート」の辺真一編集長は「一九八九年にベルリンの壁が崩壊してから東西陣営の緊張緩和が進み、反共一辺倒だった統一教会の姿勢も変わった」と指摘。「北朝鮮は統一教会の資金力に加え、米共和党へのコネクションを利用する思惑もあった。北に強硬姿勢だった同党との関係を改善しようとしたからだ」

◆安倍氏ら、教団の北朝鮮とのパイプを重視か

 一方で岸一族、特に首相時代の安倍氏は、北朝鮮と教団のつながりをどう捉えていたのだろうか。先の仲正氏は「教会は北朝鮮にいろいろなパイプがある。拉致や安全保障を巡る問題を抱えていた安倍氏らは北の情報を得るため、同国と教会との関係は黙認したのだろう」と推し量る。
 教団側は、社会的認知度を上げるために安倍氏らとの関係は重視しつつも、信者になってもらうのはハードルが高いと考えていたと仲正氏は見立てており、「賛同を得られる範囲で接点をつくり、両者は『ウィンウィン』の関係を続けたのだろう」と解説した。

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(略)

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