通常国会が閉幕した先月15日の夜、岸田首相はウクライナ情勢や物価高対策について会見を開いた。会見に出席した日刊ゲンダイ記者も質問するために挙手したが、いつも通り指名されなかった。当日、書面で質問を送付したところ、2日、ようやく官邸から回答が届いた。

 日刊ゲンダイは、消費税率が現状のままで物価が上昇すれば、消費税の税収が増えることを指摘。「4月の消費者物価指数(生鮮食品を含む総合)は上昇率2.5%でしたが、この影響による消費税の増税額はどれくらいでしょうか」と質問した。

 岸田首相の回答は「今般の物価上昇が消費税収に与える影響について、試算は行っていません」だった。

 国民は本体価格の上昇に加えて、消費税のさらなる負担を強いられているのに、岸田首相はその試算すら行っていないのである。

 税理士で立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)の試算によると、物価が1%上昇すれば、年間の消費税額は約2000億円増えるという。物価上昇率が2.5%だった4月は物価上昇に伴い1カ月間だけで消費税が416億円も増えていることになる。国庫は潤い、その分庶民の懐は寒くなっているのだ。

 物価高騰下、消費税が国民を苦しめている実態を岸田首相は見ようとすらしない──そんな姿勢が浮かび上がった回答だった。

【日刊ゲンダイの質問】

 物価上昇に伴い、消費税率がそのままなら消費税額の負担は増え、事実上の消費増税です。4月の消費者物価指数(生鮮食品を含む総合)は上昇率2.5%でしたが、この影響による消費税の増税額はどれくらいでしょうか(推計値で構いません)。その上で、国民は本体価格の値上げだけでも苦しんでいますが、さらに消費税が値上げに加勢する形で、国民の財布からお金を吸い上げるのはあまりに酷。この状況を目のあたりにしても消費減税をする考えはないのかお答えください。

【岸田首相回答】

〇今般の物価上昇が消費税収に与える影響について、試算は行っていませんが、我が国の物価上昇のほとんどは外的な要因によるエネルギーと食料品価格の上昇によるものであり、ガソリン価格の激変緩和や小麦の国内価格の抑制など、切れ目ない物価高対策を行ってきました。さらに、先般、「物価・賃金・生活総合対策本部」を立ち上げ、電気代や食料品価格の更なる負担軽減策を決めたところです。

〇また、低所得者など物価高騰の影響を受ける方々に対しては、この春に住民税非課税世帯の方々に10万円の給付金を、また、低所得の子育て世帯には、子ども1人当たり5万円の給付金を5月末から順次支給しています。さらに、地方創生臨時交付金を1兆円確保し、地域の実情に応じたきめ細かな支援を実行しており、今後、秋以降の切れ目ない支援のため、必要に応じ、地方創生臨時交付金のさらなる増額を行います。

〇このように、コロナ禍で物価高騰等に直面し、困窮されている方々にきめ細かく支援をお届けすることとしており、また、消費税は、社会保障の安定財源として位置付けられていることから、御指摘の消費税減税については考えていません。

日刊ゲンダイ
7/4(月) 14:00
https://news.yahoo.co.jp/articles/bbf616ddcf0f7ef115add6d0af0b059cf6d521af