外国訪問の直前にも

 参議院別館内にある、りそな銀行出張所のATM。普段は国会職員などが主に利用しているが、月に一度、物々しい雰囲気に包まれる。現れたスーツの一団……先頭を歩くのは岸田文雄総理だ。

 総理はATMにカードを入れ、何やら操作する。随行するSPや秘書官、番記者らにも手元は見えないが、いつも数分で用事は終わり、皆でそそくさと官邸に戻る。少し滑稽な光景である。

 動静によると、今年に入って岸田総理は、毎月10日頃に必ずこのATMに足を運んでいる。6月10日には、政府専用機でシンガポールへ飛ぶ直前にわざわざ訪れた。

 こんな行動をとる総理大臣は、過去に例がない。

新聞に書かせる必要はあるのか?

 岸田派所属の自民党議員も不思議がる。

 「総理が自分でATMに行っておカネを下ろすなんて聞いたことがない。それに現金が必要なら、裕子夫人や長男で秘書の翔太郎さんが下ろして渡せばいい話です」

 公務ではないにもかかわらず、必ず新聞の動静欄に書かれているのも奇妙だ。総理の予定には私用も含め、総理補佐官や秘書官の判断で表に出ないものも多い。本来は書く必要のない情報なのだ。

 なぜ岸田総理はATMに通うのか。ある岸田派関係者は「庶民派アピールのための行動ではないか」と推測する。

 岸田総理は政治家一族に生まれたセレブかつ、「お公家集団」と言われる宏池会の領袖である。外務大臣時代には、閣僚資産公開で原宿に「億ション」を所有していることが明るみに出て、批判を浴びたこともある。前出の岸田派関係者が続ける。

 「直近まで長男と一緒に議員宿舎に住んでいたのは、そうしたイメージを払拭するためだった。ATM利用も、その一環と考えるのが自然です」

 岸田事務所に総理の真意を尋ねたものの、締切までに回答はなかった。ちなみに7月10日はちょうど参院選の投開票日だが、その前後にも岸田総理はATMの前に現れるのだろうか。

  「週刊現代」2022年6月25日号より

現代ビジネス
6/22(水) 8:03
https://news.yahoo.co.jp/articles/eee727d73f2f43fe95672af7e9790bfadcaa93b9