0001クロ ★
2022/03/31(木) 18:13:18.46ID:CAP_USER9* * *
事件として広く知られるところとなった「改竄をめぐる出来事」ではなく、改竄前の「穏やかで幸せな暮らしの一コマ」を演劇として再現することで、妻の赤木雅子さん(51)の大切な人としてそこにいた俊夫さんを取り戻したい――。当時そこに存在し、今は失われてしまったものが何なのかを、見る人に感じ取ってもらうことで、これが自分にも起こりうることなのだと気づいてもらおうという狙いを感じた。
舞台のタイトルは「全体の奉仕者」。これは亡き赤木俊夫さんが肌身離さず持ち歩いていた「国家公務員倫理カード」の冒頭に記されている「国民全体の奉仕者であることを自覚し、公正な職務執行に当たらなければならない」という文言から取った。「私の雇用主は日本国民なんです」と口にしていた俊夫さんをモチーフにした舞台にふさわしいタイトルではないか。
若手俳優の心を動かした“認諾”
この一人芝居を演じるのは、俳優でアーティストの筒(tsu-tsu)さん(25)だ。実在の人物について取材し、役作りをし、その人物になりきって一人で演技し、その過程を振り返る一連の流れを「ドキュメンタリーアクティング」と名付けて取り組んできた。これまでに、事故で亡くなった友人が偶然残していた音源を元にその友人を演じたり、自分と同じ生年月日の人物を探してインタビューし、演じたりしてきたという。
筒さんが、赤木俊夫さんを取り上げようと考えたのは、妻の雅子さんと友人の紹介で出会ったことがきっかけだった。雅子さんは、夫の命を奪った改竄事件がなぜ起きたのか真実が知りたいと、2年前の3月、国などを相手に裁判を起こした。筒さんは、雅子さんが背負い続けてきた思いをそばで感じてきた。ところが去年12月、“認諾(にんだく)”という法律上の手続きで国に無理やり裁判を終わらされてしまった。その不本意な結末を目の当たりにしたことで、今回の作品の発表を考え始めたという。
今年1月には、東京・北青山の書店「クレヨンハウス」で行なわれた雅子さんと代理人の生越照幸弁護士の講演会に参加した。そこで参加者の一人が雅子さんに「一緒に頑張りましょうね」と声をかけるのを見て、筒さんは違和感を感じ、ふと気がついた。
「自分も当事者のつもりでいたが、結局は雅子さん一人が背負っている。雅子さんの中でも、ニュースで描かれる『正義の人』『悲運の人』としての俊夫さんが肥大化してしまっているんじゃないだろうか?」
そして「雅子さんのかけがえのない人としての俊夫さんを取り戻したい」と思うようになったという。
「悲運」ではなく「日常」を演じたい
俊夫さんについては、改竄をさせられた経緯、財務本省に反対意見を述べた正義感、改竄をきっかけにうつ病を発症し追い詰められていく過程が、各メディアで何度も報じられてきた。そこで筒さんは、よく知られている改竄から亡くなるまでの1年ではなく、改竄前の明るかった俊夫さん、まっすぐに生きた俊夫さんと雅子さんの“日常”を描こうと考えた。夫婦の平穏な日常の姿を演じることで、それを続けることが許されなかった不当さを浮き彫りにする。
筒さんが今回の一人芝居について語る。
「僕が感じたこの事件の問題の原点は『ある生が不条理に奪われた』ということです。それをうやむやにしようとする臆病が、自分にも内在します。その臆病を僕は乗り越えたいんです。雅子さんとはひょんなことで知り合って、歳の離れた友人のように接してもらっています。そんな僕だから感じうることがあるかもしれません。
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ポストセブン
2022.03.31 16:00
https://www.news-postseven.com/archives/20220331_1740895.html