自民党京都府連をめぐる組織的な選挙買収疑惑に新たな動きだ。京都府内の弁護士グループが府連会長の西田昌司参院議員ら約50人を公選法違反(買収、被買収)容疑で刑事告発する準備を進めている。河井元法相夫妻が有罪となった参院広島選挙区の大規模買収事件の様相を呈してきた。

 告発に動くのは「自由法曹団京都支部」に所属する弁護士約20人。告発対象は2019年参院選で当選した西田議員のほか、田中英之文科副大臣(京都4区)や本田太郎外務政務官(京都5区)ら昨秋の衆院選候補者6人、それに府連からカネを受け取ったとされる京都市議や府議の総勢およそ50人だ。

 渦中の面々は強弁を繰り返している。脱法スキーム発案者と指摘される西田氏は自身のユーチューブチャンネルなどで、「政治資金の流れは収支報告書に記載されており、法にのっとって行われている」などと主張。今期限りで引退するため、告発対象から除外されている二之湯国家公安委員長(参院京都選挙区)に至っては余裕すら漂う。18日も「大変驚いている。府連は何ら法に反していないという立場だ」「寄付したのは政党活動の趣旨で、やましいことはない」などと強気一辺倒だ。

■「選挙をめぐるカネのやりとりそのものがダメ」

 しかし、詭弁を弄しても疑惑は払拭されない。国政選挙のたびに候補者らが代表を務める党支部などから「寄付」の名目で府連にカネを拠出し、府連から傘下の地元議員の関連政治団体などに「寄付」「交付金」の名目で少なくとも1億円超を流し込んでいたからだ。内部文書ではその趣旨について〈候補者がダイレクトに議員に交付すれば、公職選挙法上は買収と言うことになりますので、京都府連から交付することとし、いわばマネーロンダリングをするのです〉と記載されていた。

「直接カネを渡したかどうか。広島の買収事件との違いがあるとすればその一点で、府連をかませているため立件のハードルは高い。うまいこと考えたな、という印象です。西田議員は国政選挙の候補者について〈京都府連が一致団結して支援しており、そもそも買収するという動機も必要性もありません〉と言っていますが、公選法は選挙に関わる金銭の授受を禁じている。選挙をめぐるカネのやりとりそのものがダメなのです」(告発を準備する谷文彰弁護士)

 きのうの衆院予算委員会で岸田首相は「必要なら説明を尽くしてもらうのが大事だ」と他人事答弁だったが、来る参院選への影響は避けられない。

日刊ゲンダイ
22/02/19 13:50
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