新型コロナウイルスの第6波は感染爆発の様相だ。全国の新規感染者数は10万人を突破したが、実態はその数倍に上っている可能性が高い。保健所の業務は再び逼迫し、陽性者すら把握しきれていない。検査キットや試薬が不足し、発熱外来も対応に窮している。3回目のワクチン接種は科学的根拠のないまま「2回目接種後8カ月」とされてきたせいで、接種率はいまだ5.9%(7日時点)にとどまっている。

■国民皆保険も崩壊

度重なる医療崩壊の結果、国民皆保険制度も機能しなくなった。戦後初めての事態だ。なぜこんな惨状を招いたのかといえば、厚労省の医療費削減政策に行き着く。コロナ禍に襲われても、「病床機能再編支援事業」という名の病床削減を全く見直そうとしなかった。つまり、病床数を増やすことなく、新型コロナをやり過ごそうというのである。

だから当初、「37.5度以上の発熱が4日以上継続」しなければPCR検査を受けられなかった。入院者数を抑え込むためだ。第4波によって医療に見放された在宅死の問題が顕在化しても、手を打とうとしなかった。いわゆる野戦病院の設置で病床を増やすべきだという議論も厚労省は拒否した。第6波の襲来を前に、岸田政権は「病床の見える化」をアピールしたが、人員配置まで手を打っていない。もちろん、政府お抱えの忖度専門家もその責任の一端を担っている。

 そうして、専門家の「助言」を受ける形で岸田政権は若者の受診回避を推奨。検査ナシの「みなし陽性」まで容認するに至った。病床削減に突っ走ってきた大阪府がそれに乗っかり、死者数が再び急増している。そもそも、医者だって検査せずに診断するのは不可能だ。潜在的な感染者増につながっているのではないか。文科省が保育園や小中高校の感染状況把握にようやく乗り出したが、あまりにも遅すぎる。こんな「感染対策」で社会経済活動ができるわけがない。

岸田首相は世論の怒りにも野党の追及にものらりくらり。病床削減を見直さず、ピークアウトを迎えるのをただ待っているだけだ。国民の健康や命を守るために必死にならない政府が国家運営を担うのは不幸でしかない。近代国家の出発点は国民の生命と財産を守ることだ。スゴイはずのニッポンはもはや国家の体をなしていないと言っていいだろう。

日刊ゲンダイ
22/02/09 06:00
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