岸田答弁3つの大ウソ(1)
 岸田首相は3つの大ウソをついた。国会の場で。21日、参議院代表質問で社民党の福島みずほ氏の質問に答えて。財務省の公文書改ざん事件で命を絶った赤木俊夫さんの妻、赤木雅子さんが、真実を知りたいと起こした裁判を巡る質問だ。

 国は賠償責任を認める認諾という手続きで裁判を強制終了させたが、それで支払う1億円余の賠償は改ざんの責任者である佐川宣寿元財務省理財局長に求めるべきではないか? 原因をつくった公務員に故意や重大な過失があった場合、後から負担を求めることができる「求償」を行うよう迫った。至極もっともなこの指摘に岸田首相はこう答えた。

「国が今回負うことになった損害賠償義務は、赤木氏が当時厳しい業務状況に置かれる中、国として安全配慮義務を十分尽くせなかったことにかかる責任によるもの」「(この件で)国が個々の職員に対して求償権を有するとは考えていない」

 国はこれまで認諾の理由を説明してこなかったが、この答弁で初めて述べた。安全配慮義務を尽くさなかった、過重労働にならないよう十分に配慮しなかったからだと。過労死の責任を問うケースでよく使われる言葉だが、とんでもない問題のすり替えだ。

■「安全配慮義務」の問題ではない

 赤木俊夫さんは単純な過労死ではない。最大の原因は改ざんという不正行為をさせられたこと。改ざんは佐川氏の「故意」で始まったことは明らかで、安全配慮義務が問題になる話ではない。岸田首相の答弁は、改ざんで亡くなった赤木俊夫さんの事件を、過労死の問題にすり替える大ウソだ。

 25日の衆議院予算委員会でも立憲民主党の階猛議員がこの問題を突いた。すると鈴木財務大臣は「当時業務負担の軽減などさまざまな対応がなされていたこともあって、国が個々の職員に対して求償権を有するものとは考えていない」と答えた。またも「改ざん」という「故意の不正行為」を「業務負担の軽減」という「過労」の問題にすり替えて逃げようとした。

そこで階議員は、国が認諾の際に出した書面の言葉を持ち出した。「原告の夫が強く反発した財務省理財局からの決裁文書の改ざん指示への対応を含め」自死するに至った。そう書いてある。改ざんが原因ではないか。

「これでも佐川氏に責任がないのはおかしい」

 階議員は佐川氏の証人喚問を求め、委員長は「理事会で協議する」と引き取った。喚問は当然だ。

 残る岸田首相の大ウソについてはあすから2度に分けてお伝えする。(つづく)

日刊ゲンダイ
22/01/27 06:00
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