思わず「そこが肝要か?」と言いたくなる。都内で新規感染者が急拡大し、経路の多くは「家庭内」。その抑制に宿泊療養施設の活用が課題となる中、14日の定例会見で小池都知事が“奇策”をブチ上げた。療養施設で全国の有名駅弁を振る舞うというのだ。

 初回の16日はJR東日本と協力し、山形の「牛肉どまん中」、宮城の「極撰炭火焼き牛たん弁当」、東京の「深川めし」、神奈川の「鯛めし」を用意。頻度は週に1回程度で、今後は日本航空の機内食や老舗料亭なだ万の仕出し弁当も提供する予定だ。

小池知事はいつものドヤ顔で「単調になりがちな宿泊療養に彩りを添える工夫。家庭内感染を防ぐためにご協力いただきたい」と呼びかけたが、ちょっと発想が短絡的すぎやしないか。

用意される駅弁にありつけるのは約4割

 確かに療養するホテルによっては、部屋のドア前に置かれる簡易な弁当に「死ぬほどマズい」(ある隔離経験者)と不満の声が上がっている。発症から10日も閉じ込められる中、週1食でもおいしい弁当が出ないよりも出た方がましだ。

とはいえ、都が軽症や無症状の感染者に原則として宿泊療養を求めているのに、拒む理由の多くは「不自由な外出禁止への嫌悪」である。有名駅弁につられて“軟禁生活”に転じる人がどれだけいるのか。

 しかも、16日に用意する4種類の駅弁は合わせて1000食分。14日時点で都の宿泊療養者数は2467人に上り、約6割が“ごちそう”にありつけない不公平も生じる。

 小池知事の「駅弁ひとつで人気取り」には、都民を見下す“女帝”のいやしい心根が透けて見える。

日刊ゲンダイ
22/01/15 11:25
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