「聞く力」が自慢なのに、誰の話を聞けばいいのか――。岸田政権初の経済対策の“目玉”に掲げる「18歳以下への一律10万円給付」案に抗議が殺到だ。公明党の衆院選公約を丸のみしようとしたものの、自民党内からも“バラマキ”批判が噴出。高市政調会長まで文句をつけ始める始末だ。与党間の調整は難航必至で、岸田首相は早くも立ち往生である。

 ◇  ◇  ◇

「自民党の公約とは全く内容が違います」「私たちはお困りの方に経済的支援をするという書きぶりで政権公約を作った」

 高市氏は8日、報道陣に不満げな表情でそう語り、公明案と自民の公約の違いを強調してみせた。

 政調会長として党公約をまとめた高市氏にすれば、いくら連立相手とはいえ、悪評漂う公明案を100%受け入れるわけにはいかないのだろう。特に許しがたいのは、対象が「18歳以下」と「所得制限なし」のようだ。

7日には自身のツイッターで、「18歳以下に10万円支給へ…政府・与党、所得制限設けず」と伝えた5日付の読売新聞の記事を〈誤報〉と断じ、〈自民党議員の事務所に抗議が殺到しているようです〉と投稿した。

 本当に殺到しているのか。日刊ゲンダイの質問に高市事務所は〈報道を受け、(複数議員から)『自民党公約と対象者が異なるとの苦情を受けた』『街頭演説中に抗議を受けた』との報告が相次いだ〉と回答。高市氏本人にも同様の意見が多数寄せられたというから、たまらず公明案をクサしたくなる気持ちは分からなくもない。

 SNS上でも公明案の評価は散々だ。〈子供のいない、困窮者の大人は切り捨てるんですか〉〈票目当ての金のバラマキ〉と批判がやまない。8日朝のフジテレビの番組で橋下徹元大阪市長が「天下の愚策」とこき下ろすと、この言葉がトレンド入りしたほど。JNNの世論調査でも「18歳以下に一律給付すべき」がわずか9%だったのに対し、「生活困窮者を対象にすべき」は42%に上った。

公明には見下され…

 それでも、公明に折れる気配はない。竹内政調会長は8日、報道陣に「子供は平等。バラマキという批判は当たりません」とぶぜんとした表情で語り、公約に掲げた重要政策だけに「崩れてしまっては国民への背信になる。実現に向け努力する」とかたくなだった。

結局、この日の自公幹事長会談は平行線。9日も調整を継続することになったが、与党同士の主導権争いに岸田首相は立ち往生だ。公明案を“丸のみ”すれば世論はもちろん、自民党内からも反発必至。突っぱねれば選挙協力を受ける公明から突き上げを食らうハメになる。

「官房長官時代から公明とは長年、密接な関係を築いていた菅前首相と違い、岸田さんは公明との接点が薄く、綿密な交渉ができる状況にない。今度の衆院選でも、買収事件で河井元法相が議員辞職し“空席”になった衆院広島3区には、岸田さんの地元県連が新人擁立を希望したのに、当時の執行部は却下。公明の斉藤鉄夫副代表がネジ込まれて、岸田さんは面目丸潰れ。この一件を見て、公明幹部らはどうも岸田さんをナメているフシすらあります」(官邸事情通)

 公明には見下され、足元では高市氏にバラマキ批判をけしかけられる。ほとほと、情けない「聞く力」の持ち主だ。

日刊ゲンダイ
21/11/09 13:50
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/297154/