立憲民主党は21日、第2次安倍政権以降の経済政策「アベノミクス」を検証した結果、物価上昇ほど賃金が増えず、富の偏在による格差拡大も招いたとして「失敗」だったとする報告書を公表した。枝野幸男代表は「抜本的に変えない限り経済の低迷を抜け出せない」と記者団に述べ、次期衆院選の公約に消費税率5%への時限的な引き下げや、富裕層への課税強化といった対案を盛り込む考えを示した。

 アベノミクスが「3本の矢」とした大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略について分析。第2次安倍政権が発足した2012年以降、実質賃金は5%近く減少し、20〜30代を中心に貯蓄が全くない世帯が急増した一方で、大企業を中心に内部留保が積み上がっていると指摘した。
 株高を背景に1億円以上の高所得層が増加して「『お金持ち』をさらに大金持ちに、『強い者』をさらに強くしただけに終わった。格差や貧困の問題の改善にはつながらなかった」と総括。8年以上続く日銀の大規模金融緩和に関しては、物価上昇や消費意欲喚起を狙った短期的な対応としては否定しなかったが「いわゆるカンフル剤で、打てば打つほど効果が減殺され、副作用も起きている」と批判した。
 枝野氏は「日本の経済と暮らしそのものが緊急事態の状況にある」と訴え、所得再分配政策を近く提示する考えを明らかにした。25年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化を掲げる政府目標の凍結も打ち出した。報告書は党のアベノミクス検証委員会(委員長・江田憲司代表代行)が有識者の意見を聞くなどしてまとめた。(市川千晴)

東京新聞
2021年9月21日 20時26分
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