菅首相が再選を狙う自民党総裁選(17日告示、29日投開票)を巡る策謀が連日乱れ飛び、党内は上を下への大騒ぎ。早ければ3日にも党役員人事が行われる見通し。自分の延命のためには奇策も禁じ手もいとわない菅首相の執念はダダ漏れで、反発は強まる一方だ。「サラバ、菅首相」とばかりに、「名誉回復退陣シナリオ」まで浮上している。

 総裁選を衆院選後に先送りするという菅首相の暴走プランには、安倍前首相までもが反対の意向を伝え、子飼いの小泉進次郎環境相も同様に「踏み切れば自民党も終わる」とクギを刺したという。菅首相は1日、「今は解散できる状況ではない」と打ち消しに躍起だったが、いったん火がついた不信の炎はそう簡単には消えない。

 谷垣グループの代表世話人を務める中谷元防衛相は1日の会合で、「総裁選は党則に基づいて、決められた日程の下で正々堂々と行って、自民党が『新しい総裁』の下でしっかりとした政治基盤の下に政策を実行していく」とグサリ。中谷氏は「衆院選後に『小池新党』との保守合同を真剣に検討すべきだ」とトンチキ発言をしたこともあったが、総裁選では石破元幹事長が出馬するたび推薦人に名を連ねるなど、ある種の“正統派”だ。公然と「菅降ろし」の口火を切ったことで、党内にグズつく不満が一気に噴出しかねない。

政権にしがみつくほど醜態をさらすだけ

 二階幹事長外しで同派の若手は不安でガタつき、後任の座で釣れると甘く見られた岸田前政調会長は憤慨。石破氏も「次の次」を見据え、菅首相にくみしないともっぱらだ。

「感染爆発を見れば、菅さんに総理総裁の資格がないのは明らか。政権にしがみつくほど醜態をさらすだけ。総裁選告示ギリギリまで粘るにしても泥仕合は回避し、潔く退陣した方がいい。安倍前総理の辞任を受け、官房長官として支えた責任から残り任期と政策を引き継いだが、満了を迎えるので退くと言えばいいのです。人の噂も七十五日。新総理総裁が誕生すれば『コロナ禍のショートリリーフ首相』としてしか記憶されず、名誉も回復できます」(自民党関係者)

 もっとも、人事とカネがすべての権力亡者かつ、楽観論にとりつかれた菅首相に正論が響くのかどうか。

日刊ゲンダイ
2021/09/02 14:10
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