自民党、国民民主党、日本維新の会、社民党、れいわ新選組の5党が2019年、「政策活動費」や「組織活動費」の名目で党幹部ら30人に総額約22億円を支出していたことが、政治資金収支報告書の本紙の調査で分かった。禁止されている政治家個人への寄付を政党だけに認める制度があるためで、その先の使途は報告義務がない。1994年の政治改革で小選挙区制と同時に埋め込まれた「抜け穴」は、秋に総選挙を控えた現在も解消されていない。

政治資金収支報告書 政治団体の収入、支出、資産を記載するよう政治資金規正法で定める報告書。年間5万円超の寄付をした人や、20万円を超える政治資金パーティー券の購入者も記載する。総務相や都道府県の選挙管理委員会に提出。総務相所管の2019年分は昨年11月に公表された。

◆自民が最多、国民民主、維新、社民、れいわも
 政治資金規正法は政治家個人への寄付を禁じ、資金管理団体や政党支部で受けて収支報告書を提出するよう定めている。ただ、「政党がする寄付」には適用しないという例外規定があり、支出が認められている。

 19年の収支報告書を集計したところ、こうした政策活動費などを最も多く支出していたのは自民。二階俊博幹事長や甘利明選挙対策委員長(当時)ら計18人に13億410万円を出していた。国民民主は玉木雄一郎代表と平野博文幹事長(同)に8億1000万円を支出。維新は党支部の位置付けの国会議員団から、5865万8000円を馬場伸幸幹事長ら4人に出していた。社民は照屋寛徳国対委員長ら5人に1500万円を、れいわは山本太郎代表に40万円を出していた。

◆報告書に記載なし、識者「制度変える必要」
 支出された議員らが代表を務める資金管理団体や政党支部で、判明した約100団体の収支報告書を調べたが、受領の記載はなかった。取材に対し、自民、国民民主、維新は党勢拡大や政策立案の資金としたうえで「政治資金規正法に則のっとり、適正に処理している」などと回答。社民は「適正に支出」としたうえで「使途報告が求められない現行制度は法の趣旨に照らして十分とはいえない」と答えた。れいわは「領収書管理の負担軽減のため。ただ、支援者が寄付した資金を分かりづらい形で支出することは改善する必要がある」としている。立憲民主党、公明党、共産党は19年分の支出がなかった。
 東京大の谷口将紀教授(現代日本政治論)は「政治資金規正法の狙いは政治家の資金面の公私の峻別しゅんべつだが、大きな抜け穴になっている。議員が自らの資金管理団体で収支報告するか、政党が使途を説明させるなど、制度を変える必要がある」と指摘する。

◆<記者解説>不透明な資金の横行、許されるのか
 「子どもにお使いを頼んで、家計簿にそのまま『お使い』とだけ書いておくようなもの。何を買ったか分からない」
 使途の報告義務がない「政策活動費」などの問題点を、神戸学院大の上脇博之ひろし教授はこう例える。
 「抜け穴」は、1994年成立の政治改革関連法で生まれた。政治腐敗が相次いだ時期。金権政治の温床を断ち切るべく、政治献金の制限など政治資金の「入り口」の議論に熱視線が注がれた。だがその裏で、使途などの「出口」を巡り、政治家自身の縛りを緩める法改正がひっそりと行われた。
 それから30年近く、与野党問わず制度は使われ続けている。国会での追及も散発的。「答える立場にない」「適正に支出」と述べ合い、自浄作用が働いたとは言えない状態だった。
 コロナ禍で国民が困窮にあえぐ中、政治の現場で不透明な資金が横行する現状は許されるのか。今秋には総選挙がある。民主主義を担う公党である以上、与野党で法改正に向けた議論を始める必要がある。少なくとも、使途報告を義務づけるルール作りは今すぐにでもできるはずだ。(木原育子)

東京新聞
2021年8月31日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/127817