秋の衆院選を目前に控え、自民党が支持率を落とす一方で、連立を組む公明党は激震に襲われている。8月4日、同党の吉田信宏、太田昌孝、両衆院議員の議員会館事務所に東京地検特捜部がガサ入れを行ったためだ。両議員の秘書に貸金業法違反の疑いがかけられているというが、同党の石井啓一幹事長は「ガイドラインの策定をして明確にしていきたい」と述べるのみ。事件のカギを握ると言われるキーマンがかつて公表した怪しげな“番付表”には、今年2月に辞職した公明党の遠山清彦・前財務副大臣や同党最高顧問の名まで明記されていて……。

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 今回の貸金業法違反の疑いは、太陽光発電施設の開発やバイオマス発電事業などを装い虚偽の書類を提出して金融機関から多額の資金(計22億円)を搾取したとされる、テクノシステムの捜査の過程で浮上したもの。同社の生田尚之社長は、すでに詐欺と会社法違反(特別背任)で起訴されている。社会部デスクが言う。

「テクノ社は約150億円(うち金融債務は約90億円)とも言われる負債を抱え、民事再生法の適用を受ける準備入ったと言われていますが、同社から100万円の政治献金を受けていたのが、公明党の遠山元議員でした」

 遠山氏と言えば、今年1月に緊急事態宣言中にもかかわらず、銀座のクラブを訪れていたことが報じられ議員辞職した。

遠山とは約8年前からの付き合い

「遠山氏の政策秘書はその後、吉田代議士の秘書を務めていますが、遠山氏の秘書時代に、財務省が所管する日本政策金融公庫からの融資を、無登録で仲介した事件に関与した疑いが浮上しました。遠山氏にも計数百万円の現金が渡された疑いがある。遠山サイドとテクノ社を繋いだのが、テクノ社の最高顧問を務めていた人物で、事件のキーマンと呼ばれているのです」

 仮にキーマンをAとしよう。彼は読売新聞(8月7日付)の取材には、約100社の融資を仲介したとも語っているが、「週刊新潮」(8月26日号)にはこう答えた。

「遠山とは約8年前からの付き合いで、当時から俺は遠山の支援者で応援団長。遠山とテクノの生田尚之を繋いだのも俺だ」

 前議員とはいえ、呼び捨てである。A氏自身も特捜部からの事情聴取を受けたと言うが、

「俺はテクノ以外にも数十社の会社の顧問をしていて、それら顧問先から昨年、“コロナで会社が潰れる。何とかして欲しい”と頼まれた。だから俺の秘書が遠山の秘書に“公庫の担当者を教えて欲しい”と相談したのは事実。でも俺から遠山にカネを渡したことはないし、俺が顧問先から手数料を受け取ったこともない」

 一体何者なのだろうか。前出記者が語る。

「大御所」に大物の名

「業界ではブローカーと言われています。彼が代表を務める会社のホームページを見ても、実態はよく分かりません。現在は削除されていますが、そのページには興味深い“番付”のような名簿が掲載されていました。どうやら自分の人脈を誇示するために、こんなものを作ったようですね」

 なぜか、大名の役職名簿のような名簿で、「殿」にはもちろんA氏の名が記されている。

 その下の「大目付」には、かつて“友愛”を政治信条に総理大臣まで務めた人物、「目付」には、現職閣僚と遠山氏の名が記されている。

 そして「殿与力」に任ぜられたのがテクノ社の生田社長だった。

 この番付、「若侍大将」や「若侍」などと続くのだが、実は「殿」の上に「大御所」がいた。

「そこに明記されていたのが、東京都議を11期務め、公明党最高顧問まで務めた、藤井富雄氏でした。今年7月に老衰で亡くなりましたが、終戦直後から池田大作名誉会長の側近で、支持母体である創価学会にも影響力を持っていました」

 まさに「公明党のドン」と言っていいだろう。もっとも、顔の広さを自慢する人物はどこにでもいるものだが、全く無関係の元総理や閣僚の名を勝手に使うはずがない。

「遠山氏のTwitter(すでにアカウント消去)には、このA氏との2ショット写真が掲載され、こう呟かれていました」

《公明党の重鎮、藤井元都議のご紹介で来室なされた○○さん(A氏)と。非常にグローバルな方》

 遠山氏とA氏を仲介したのは藤井氏だったというのである。番付表に名前が登場する人たちの心境やいかに――。

デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/08270601/