いったい誰が、どういうプロセスで決定したのか。

 新型コロナウイルス患者の入院を重症患者に制限し、中等症以下は自宅での療養を基本とする政府の新方針には、与党内からも批判が殺到している。

「菅総理が2日の関係閣僚会議で突然、この方針を発表した。中等症から急に重症化するケースがあることも分かっているのに、医療放棄と言われても仕方ありません。こんな愚策を誰が言い出したのか。なぜ厚労相は了承したのか。発案者にきっちり責任を取ってもらわないと、秋の総選挙はとても戦えません」(自民党中堅議員)

 2日の関係閣僚会議に出席していたのは菅首相と加藤官房長官、田村厚労相、西村コロナ担当相、赤羽国交相の5人だ。

尾身会長も「聞いてない」

 4日開かれた衆院厚労委の閉会中審査でも、入院制限の政府方針に質問が集中。従来の「中等症以上は原則入院」からの方針転換について、政府対策分科会の尾身会長は「相談、議論をしたことはない」と断言した。専門家の意見も聞かずに入院制限を決めたわけだ。委員会室にどよめきが広がったが、田村厚労相は「病床のオペレーションの話だから政府が決める」と開き直っていた。

 患者を見殺しにするような政府方針には、野党だけでなく、連立を組む公明党の高木政調会長代理も、厚労委で「酸素吸入が必要な中等症患者を自宅でみるなんてあり得ない」と猛批判。「撤回も含め検討し直してほしい」と求めた。

 自民党内でも、4日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策本部とワクチン対策PTの合同会議で入院制限に批判が噴出。政府に撤回を求めることで一致した。5日、予定されている与党と政府の会合で撤回を申し入れるという。

 先月、西村コロナ担当相が発表して世論の猛反発を食らった銀行や酒販業者から飲食店に圧力をかけさせるプランに続き、入院制限もすぐさま撤回に追い込まれるのか。

「コロナ対策は迷走が続いている。これだけ重大な方針転換には国会での議論が必要だし、少なくとも、誰の意見をもとに、どういうプロセスで決定したのか明らかにする必要があるでしょう。もっとも、専門家の意見も聞かずに、国民を見捨てるような方針を首相が堂々と発表してしまった以上、撤回してもしなくても政権には致命傷です」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

 菅首相は4日も「撤回しない」と強気だったが、このまま突っ張れば多くの国民を敵に回すだけだ。

日刊ゲンダイ
21/08/05 14:30
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