現場の混乱はピークに達している。

 東京五輪の開幕が1週間後に迫っているが、世界各国の選手団を迎える宿泊施設は二転三転する大会組織委員会の対応に翻弄されているからだ。

■毎回話が変わる

 海外6カ国のサーフィン代表選手団を受け入れる千葉県いすみ市「九十九里ヴィラそとぼう」の杉本春枝総支配人は「状況がコロコロ変わり過ぎて、経緯を話すだけでも相当時間がかかりますよ」と苦笑いでこう続けた。

「毎回、話が変わるので、組織委員会の人から連絡が来るたびに『今度は何!?』と思うようになった。今話している内容も、明日にはまた変わっているかもしれません」

 組織委からホテルに宿泊施設提供の依頼があったのは一昨年の2月ごろ。フランス、イタリア、スペインの3カ国分、9部屋を押さえてほしいという注文だった。

 しかし、今年5月末になって突然、組織委から「残りの空き部屋を全部押さえてほしい」と電話が来たという。

「『詳細はすぐ連絡する』と言っていたのに、6月半ばまで音沙汰なし。しびれを切らしてこちらが連絡すると『組織委員会としてお金を出せなくなったので、自分たちでやってくれ』と言うんです。要は、組織委員会が本部に提出する経費の申請が5月末締め切りで、それに間に合わないから出せないと。『各NOC(国内オリンピック委員会)と直接やって』と提案され、困り果てていたら、すぐに連絡が来て『お金が出せるようになった』と。それでドイツ、モロッコ、オランダが加わりました。でもいまだに何人来るかも分からない。(担当者に)『もういい加減にしてよ』と言いましたよ」(杉本総支配人)

 先日、セーリング中国代表が宿泊先の感染対策が不十分として組織委に抗議したが、杉本支配人が「ヴィラそとぼう」と共に運営する「ホテルくじゅうくり」でも同じ騒動が起きかねないとこう言う。

「『ヴィラ』の方は組織委員会が『こちらが責任をもってやります』と言ってきたんですが、『くじゅうくり』の方は『こちらではやらない。代理店を通してやって』と言う。『ヴィラ』は組織委員会が部屋を全部買い取ってくれたからいいんですけど、『くじゅうくり』は旅行代理店を通じて、半分の部屋しか押さえられていない。買い取ってくれないのであれば、お客さんを入れるしかない。『くじゅうくり』の方は、大会期間中も一般客を入れているし、(中国代表が抗議したような)廊下で選手と一般客が会うようなことも出てくると思います。でもね、人数に関しては、旅行代理店を通した『くじゅうくり』に宿泊する日本、ニュージーランド、ポルトガルは全部分かっている。組織委員会管轄の『ヴィラ』はほとんど分かっていないのに……」

2に続く

日刊ゲンダイ
2021/07/16 06:00
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