大阪府内で大きな犠牲を生んだ新型コロナウイルスの「第4波」では、大切な人をコロナで亡くした人が大勢いる。その中には行政をチェックする立場から感染防止対策に関わってきた議員も含まれる。コロナの一当事者となり、危機的な医療・療養体制の下で厳しい対応を迫られた議員たちの体験と思いとは。

保健所に電話200回以上

 大阪府議を務める須田旭(あきら)さん(42)は5月31日の府議会一般質問で執行部席に並ぶ吉村洋文知事らを前に一人の死を取り上げた。示したのは、保健所へ200回以上も電話をかけたのにつながらなかったスマートフォンの発信履歴。医療崩壊が起きた実例を示し、政策が一人一人の命に直結していることを訴えるためだった。「実は先日、私の父がコロナで命を落としました」

 東大阪市の実家で妻(81)と2人暮らしする父勇一さんから異変を告げる電話があったのは4月23日。「体がしんどい。熱もある」。PCR検査で26日に感染が確認され、39度台の高熱が続いた。

 須田さんは26日夕から27日未明にかけて、勇一さんの体調悪化を伝えようと東大阪市保健所に電話をかけたが一切つながらなかった。この時期、府内では1日1000人を超す新規感染者が連日確認され、保健所はパンク状態だった。

 「療養方法の相談をしたくて何度電話をかけても、通話がすぐに切れることの繰り返し。自宅待機というより、放置に近い状態だった」。須田さんのスマートフォンには東大阪市保健所に電話した200回分の発信履歴が残る。保健所から27日午前に連絡があり、容体の厳しさを伝えたが、「分かりました」という返事で、治療方針に関する特段の説明はなかったという。

 30日ごろ、119番して救急搬送を要請。しかし、…

毎日新聞
2021/7/13 07:00
https://mainichi.jp/articles/20210712/k00/00m/040/273000c