今国会での成立か、廃案か、8日から大詰めの参院審議が始まった法案があります。「重要」な施設の周辺で土地の利用を規制する法案ですが、市民生活への意外な影響も懸念されています。

 「この国の安全保障に関する厳しさが増してきた。それを調査することが1つの大きな目的」(小此木八郎国家公安委員長)

 自衛隊基地や原発など「安全保障上重要」だとする施設の周辺で土地の利用を規制するという「土地規制法案」。重要施設の周辺およそ1キロメートルを「注視区域」などに指定し、監視を強めることを目指しています。

 「陸上自衛隊の目黒駐屯地は閑静な住宅街の中にあります。土地規制法案はこうした土地所有者の個人情報を調べることができるとしています」(記者)

 「注視区域」に指定されると、政府が土地や建物の所有者の個人情報を調査できるようになり、「特別注視区域」では土地の購入前に内閣総理大臣に対し、個人情報と土地の利用目的を届け出ることが義務づけられます。

 「一定の区域に住んでいるだけで、自衛隊の制服とか隊服を着た人がピンポーンと来るのを想像してみてください。調査を受けること自体が負担になる」(立憲民主党 大西健介議員)
 「注視区域内にある土地等の利用状況を把握するため必要最小限で内閣府が主体的に行うものであり、市民に具体的な負担を課すものではない」(小此木八郎国家公安委員長)

 不動産価格が下落するとの懸念も・・・

 「(土地購入で)めんどくさいことになるなら、ここ(特別注視区域を)やめておこうということが現実に起きますよ」(立憲民主党 後藤祐一議員)
 「(規制は)必要最小限のものと考えていて、地価に与える影響は小さい」(内閣官房の担当者)

 さらに、この法律では政府が指定した施設に対する「機能を阻害する行為」とみなされれば、刑事罰が科される可能性があるのです。いったいどんな行為が罰せられるか、法案を推進する立場の自民党議員は、沖縄での基地反対運動を念頭にこう主張しました。

 「(デモ隊の)人々に支給されているお弁当のごみなどが風に飛ばされるなどして基地の中に入ってしまうことも十分に考えられます。一見して直ちに重要施設の機能を阻害しているように見えなくても、そこから派生する影響等も十分に考慮して、本来の目的を果たしていただきたい」(自民党 杉田水脈議員)

 一方、野党からは米軍基地や原発への反対運動などが「機能阻害行為」として取り締まりの対象となる可能性に懸念が示され、日弁連も法案に対する反対声明を出しています。

 「刑罰を予定しているときに事前にここからはだめ、ここまではセーフという判断を読み取れない法案になっています。政治的な自由に対して、萎縮的な効果を与えかねない」(馬奈木厳太郎弁護士)

 法案について、与党は今国会での成立を目指し、廃案を目指す野党側との最後の攻防が続いています。

TBS NEWS
8日 17時27分
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4287235.html