政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家が、東京五輪・パラリンピック開催による感染拡大リスクに関する考えを表明することについて、田村憲久厚生労働相は4日の記者会見で、分科会の正式な提言として政府が受け止めない方針を示した。「政府で参考にするものは取り入れていくことはあるが、自主的な研究の成果の発表だと受け止める」と述べた。菅義偉首相も大会開催に関する議論を分科会で行うことを否定した。

 田村氏は、大会開催に関する具体的な感染対策を決める東京都と大会組織委員会、各省庁の「調整会議」の協議には、感染症の専門家が2人入っていることを理由に「専門家の意見を反映している」と説明。「専門家はいろんな分野でいるので、自主的にいろんなことを言うことはあると思う」と述べた。
 首相も4日、先の記者会見で指名されなかった報道機関が提出した質問に対する書面回答で、大会の感染対策の策定は「専門的な立場も交えて、議論を重ねてきている」とし、分科会に大会開催に関する議論を依頼しない姿勢を示した。

 加藤勝信官房長官は記者会見で、尾身氏らが近く示す考えに関して「分科会を代表して話す場合と、そうではない立場で話す場合、いろいろある。分科会以外の形でも、専門家としての意見をしっかりと聞いていく(政府の)姿勢は変わりはない」と釈明した。
 尾身氏は4日の衆院厚労委員会で、専門家の考えを表明する時期について、緊急事態宣言の期限の20日以降に、政府や組織委が観客の取り扱いなどを決めると説明していることに言及し、「その後だと意味がない。その前にお伝えできればいいと考えている」と語った。(清水俊介)

東京新聞
2021年06月04日 20時23分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/108706