森友学園に関する決裁文書の改ざんを強いられ、自殺した財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻雅子さん(50)=神戸市=が28日、長野市の信濃毎日新聞社を訪れ、国などを相手に続ける法廷闘争への思いを語った。改ざんの方向性を決定づけたとされる当時の理財局長、佐川宣寿氏をはじめ当時の上司や同僚について、訴訟でいずれ尋問したいとの考えを明らかにし、「改ざんに関わった全員に(真実を)話してほしい」と望んだ。

 雅子さんはこの日、俊夫さんがスケジュール帳に挟んでいた「国家公務員倫理カード」のコピーを持参。「職務や地位を私的利益のために用いていませんか?」と記されたカードは長年使い込まれ、所々擦り切れている。雅子さんは俊夫さんが「僕の雇用主は国民」と誇りを持っていたと振り返り、当時の上司や同僚も公務員倫理を守っていれば「こんなことにならなかったのに…」と声を落とした。

 俊夫さんの死去から3年余り。国は俊夫さんが改ざんの過程をまとめた文書「赤木ファイル」を6月23日の口頭弁論で提出する予定だ。時系列で経過をまとめた文書の他、近畿財務局と財務省理財局との間でやりとりされたメールや添付資料が含まれる。

 雅子さんは、俊夫さんがファイルを残した意図について「どういう指示があって改ざんしたのか、世の中に知らせたかったからではないか」と推測。国が開示に当たり黒塗りする意向を示したことを強く懸念し、「少しでも黒塗りをはぎ取りたい」と話した。

 第三者委員会による再調査を求める電子署名も提出したが、麻生太郎財務相が再調査を否定していることには「自分たちは調査される側の立場であることを分かってほしい」と訴えた。

 雅子さんは訴訟に関心を持ってもらおうと新型コロナウイルス下、PCR検査を週2回ほど受けつつ、13日から沖縄県を皮切りに全国を回っている。

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〈赤木俊夫さん自殺訴訟〉 学校法人森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で、同省近畿財務局職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が2018年3月、改ざんを強いられたとする手記を残して自殺した。妻雅子さん(50)は20年3月、国と当時の同省理財局長、佐川宣寿氏を相手に、俊夫さんが佐川氏の指示で改ざんを強制され、自殺に追い込まれたとして計約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。国側は雅子さんが訴訟で証拠提出を求めた「赤木ファイル」について「探索中」などとして存否を明らかにしていなかったが、今月6日、存在を初めて認めた。

信濃毎日新聞
2021/05/29 15:01
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021052900198