愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動を巡る署名偽造事件で、署名活動団体「愛知100万人リコールの会」会長の高須克弥氏の女性秘書が、押印のない署名簿に自身の指印を押していたことが20日、関係者への取材で判明した。高須氏は4月に女性秘書から報告があったことを認め、「何でそんな違法なことをやるのか」と叱責したという。

 関係者によると、同会の事務局関係者は2020年10月下旬〜11月上旬の数日間、名古屋市内の生涯学習センターなどで、署名簿を自治体別に仕分けする作業を行った。この間、同市の一部の場所には佐賀市でアルバイトが代筆したとみられる偽造署名が大量に運び込まれ、同会事務局長の田中孝博容疑者(59)=地方自治法違反容疑で逮捕=の指示を受けたスタッフらが押印のない署名簿に自身の指印を押す作業に従事。女性秘書もその場所で指印を押していたとみられる。

 同じ時期に、事務局幹部だった元愛知県常滑市議(52)も、田中容疑者の指示を受けて署名簿約500枚に指印を押したと周囲に話していることが明らかになっている。高須氏は毎日新聞の取材に対し、4月半ばに本人から「みんなが押していたところに、一緒に押しました」と報告があったことを認めた。

高須氏「もらい事故みたいなもの」

 高須氏は「田中事務局長しか指示する人はいない。彼が総指揮を執るように僕が全権委任したので、結局僕が命令したのと同じ」と述べる一方で、女性秘書について「たまたまボランティアでいた時に手伝っただけで、もらい事故みたいなもの」と擁護した。

 一方、田中容疑者らが、佐賀市内でアルバイトを雇って署名を代筆させたとされる20年10月下旬の直前に、偽造のために使った名簿類を東京の業者から入手した疑いがあることが関係者への取材で判明した。愛知県警は20日、田中容疑者ら4人を同法違反容疑で名古屋地検に送検。署名を代筆するアルバイトの募集に関わったとされる名古屋市の広告関連会社とその下請け会社を家宅捜索した。【藤顕一郎、太田敦子】

毎日新聞
2021/5/20 17:35
https://mainichi.jp/articles/20210520/k00/00m/040/187000c