新型コロナのワクチン接種を巡っては、各地で予約に伴う混乱が生じているが、それでも高齢者の接種は徐々に進んでいる。東京、大阪での大規模集団接種センターの予約も始まった。ところが、開始早々、予約システムに不備があることが報じられた。センターの設置・運営をする防衛省は、システムの一部修正を表明するとともに、報じたメディアに対し、抗議文を送ったことを明らかにした。

スケジュール優先で不備のまま予約開始

 この不備は、架空の接種券番号などを入力しても予約の手続きが出来てしまうこと。予約が完了しても、会場では接種券を確認するため、虚偽予約で接種はできない。しかし、システムをこのままにすれば、予約はあるのに当事者が現れずにワクチンが無駄になったり、あるいは番号を間違えて入力したりした人が、会場に行っても予約がないとみなされて接種できないなどの問題が生じてしまう。かなり本質的で重大な欠陥と言えよう。

 5月18日付時事通信の記事によれば、防衛省はシステム上の不備を事前に把握していたものの、24日に接種をスタートさせるスケジュールを優先し、改修を見送っていた。

朝日・毎日系メディアのみに批判・抗議

 この不備については、ネットメディアでは日経BP社の日経クロステック、朝日新聞出版が運営するAERA.dotが、新聞では毎日新聞、日経新聞の2紙が電子版と紙面で、17日から18日にかけて相次いで報じた。

 すると、防衛省が18日、朝日新聞出版と毎日新聞の2社に抗議文を送付。岸防衛相は、記者会見で両社について「悪質な行為であり、極めて遺憾だ」と述べ、同氏のTwitterでも両社を名指しして、同様の批判を行った。

 ワクチンの調整を担当する河野太郎行政改革相も、「65歳以上でない方が面白半分に予約を取って、65歳以上の方の予約を邪魔し、それを誇っているかのような報道があった」とし、報道が「面白半分」の妨害行為であるかのような発言をした。

 さらに岸防衛相の実兄である安倍晋三前首相も、Twitterに「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える。防衛省の抗議に両社がどう答えるか注目」と投稿した。

 ネットには、「これは犯罪だ」「防衛省は刑事告訴すればよい」などと朝日、毎日両社を非難する声があふれた。「テロ行為だ」などという過激な物言いまで飛び出す始末だ。

 おかしなことに、非難の対象になるのは朝日、毎日ばかりで、同趣旨の記事が掲載されている日経クロステック、日経新聞についての言及はない。朝日、毎日の両メディアを毛嫌い・目の敵にしている人たちが、「ここぞ」とばかりに大声を上げたのだろう。

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江川紹子 | ジャーナリスト・神奈川大学特任教授
5/20(木) 10:10
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20210520-00238759/