庶民派イメージを売る菅義偉首相の長男が、総務省から許認可を受ける放送事業会社・東北新社の部長として、
幹部官僚らに7万円のステーキやらの高額接待をしていた。

 しかも、その長男には「コネ入社」の疑惑も持ち上がっている。東北新社の創業者が菅首相の支援者で多額の献金をしているからだ。

 それが事実なら、パパの力で総務大臣秘書官となり、パパのパトロンの会社に入り、パパの威光で総務省幹部に懐柔させていたことになる。
「既得権益の打破」を訴えていた菅首相が、実は政治家という特権的立場をフル活用して身内に利益をもたらす、
ゴリゴリの「既得権益おじさん」だったという事実に、政治や行政への不信感が高まっている人も多いだろう。

 筆者もまったく同感だが一方で、報道対策アドバイザーとしてさまざまな企業不祥事に立ち会ってきた立場として、
それよりも関心があるというか、不思議でしょうがないことがある。
それは、なぜ東北新社の経営陣が「首相の息子に官僚を接待させる」という明らかにアウトな戦略を何年も続けていたのか、ということだ。

 東北新社のWebサイトに掲載された、中間報告概要によれば、執行役員が「自ら主導をして多数回の会食を実施」、
その執行役員を管理監督すべき立場にあった取締役執行役員も「自らも複数回の会食を主導」、
さらに前社長の二宮清隆氏も「自ら上記会食に同席」していた。

 つまり、「総務官僚への接待攻勢」は、なにも菅首相長男が自分の人脈をひけらかすために勝手にやっていたことではなく、
東北新社経営陣が会社の方針として決定し、自らも進んで動いていた「事業戦略」なのだ。

●総務省へのロビイングは続いていた

 実際、総務省などの報告では、東北新社による幹部ら13人の接待は、2016年7月から20年12月にかけてのべ39件にのぼる。
「たまたま」「うっかり」という言葉では説明できない数字であり、「絶対に幹部を接待漬けにしてやるぞ」という強い意志さえ感じる。
そんなアウトロー的な経営方針に加えて、筆者が驚いているのが、この39件の半分に菅首相の長男を同席させている点だ。

 東北新社が接待攻勢を強めていく18年、森友・加計学園問題が発覚して「官僚への忖度」「アベ友」なんて言葉が
連日のように取り沙汰されたのは、記憶に新しいだろう。

 首相の夫人や友人たちが関わる事業がことごとく「政治の介入があったのでは」と疑惑の目を向けられる
社会の風潮のなかで、菅官房長官(当時)の長男の、総務大臣政務秘書官時代に培った人脈を利用して、
総務省幹部を接待していることに対して、東北新社の経営陣がなんのリスクも感じなかったとは考えにくい。

 官僚人事を支配する「菅官房長官」とのパイプをちらつかせて、幹部官僚に接待攻勢を仕掛けて許認可に
影響を与えていたとしたら、モリカケ問題よりはるかに悪質だ。会社がひっくり返る大スキャンダルである。
しかし、経営陣は「首相の長男」を引っ込めるどころか、接待の最前線に立たせ続けていた。

 経営陣が超お気楽だったという可能性も否めないが、常識的に考えればこれは
「菅首相の長男を用いてのロビイング」が、東北新社経営陣とって、リスクを上回るメリットが感じられたということではないのか。

 例えば、総務省の有識者会議「衛星放送の未来像に関するワーキンググループ」の18年の報告書で、
右旋帯域利用枠について「公募するか、新規参入が適当」とあったものが、
20年の報告書案では「4K事業者に割り当てるべき」と変更され、東北新社など既存事業者の要望に沿う形に変更されている。
これについて2月25日の衆院予算委員会で、日本共産党の藤野保史議員が、
東北新社の接待攻勢によって要望が反映されたのではないかと指摘している。

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https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2103/02/news048.html