陸自OBが私的に戦闘訓練「楯の会に酷似」三島信奉 - 社会 : 日刊スポーツ
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[2021年1月23日18時4分]

陸上自衛隊特殊部隊のトップだったOBが毎年、現役自衛官、予備自衛官を募り、三重県で私的に戦闘訓練を指導していたことが23日、関係者の証言などで分かった。訓練は昨年12月にも開催。現地取材で実際の訓練は確認できなかったが、参加者が迷彩の戦闘服を着用しOBが主宰する施設と付近の山中の間を移動していた。自衛隊で隊内からの秘密漏えいを監視する情報保全隊も事実を把握し、調査している。

自衛官が、外部から戦闘行動の訓練を受けるのが明らかになるのは初めて。防衛省内には、職務遂行義務や守秘義務などを定めた自衛隊法に触れるとの指摘がある。OBは作家の故三島由紀夫が唱えた自衛隊を天皇の軍隊にする考え方に同調するなど保守的主張を繰り返しており、隊内への過激な政治思想の浸透を危惧する声も出ている。

関係者によると、訓練を指導するのは、テロや人質事件などに対応する陸自唯一の特殊部隊で2004年に発足した「特殊作戦群」の初代群長を務めた荒谷卓・元1等陸佐。自衛隊を退職後の18年11月、三重県熊野市の山中に戦闘訓練や武道のための施設を開設。直後の同年12月、19年4月、20年12月と現役自衛官、予備自衛官を募り「自衛官合宿」と称し戦闘訓練を続けてきた。

同施設のホームページに掲載された20年の募集要項によると、「真に国を愛する自衛官が、自衛隊ではできない実戦的訓練をする場」と説明。訓練内容を「チームビルド」(部隊編成)、「プランニング」(作戦計画)、「オペレーション」(作戦行動)など-としている。

20年12月26〜30日の日程で開催された合宿には十数人以上が参加。人目を避けるためか、日没近くになると迷彩服に着替え乗用車に分乗し、施設から訓練を行う山林に向かっていた。荒谷氏は取材に応じなかった。

三島は1970年、憲法改正に向けた自衛隊の決起を促し、駐屯地に押し入り、割腹自殺した。59年生まれの荒谷氏は雑誌のインタビューなどで三島を信奉していると公言。「三島精神に感化された」と語り、三島が結成した学生らの民間防衛組織「楯の会」と同様の組織の必要性も訴えている。

防衛省幹部の一人は「元群長にはカリスマ性があり(元群長と参加した自衛官の関係は)三島と楯の会に酷似している」と指摘する。 (共同)