「(給付金は)国の借金でやっている。後世の人に借金を増やすのか」「『あなたのために後世の借金を増やすのか』と(報道機関から)言ったらどうか」――。22日の閣議後会見で、新型コロナウイルスによる経済悪化を受けた特別定額給付金の再支給の可能性を問われ、こう記者に反論した麻生財務相。

 ネット署名サイト「Change.org」が13日から再給付を求める署名を求めたところ、20日までに7万2000人以上が賛同。「自粛と補償はセット」「国民の命と生活を守るのは政府の仕事」などのコメントが寄せられているが、麻生財務相に庶民の想いは届いていないようだ。

「後世の人に借金を増やすのか」などと正論を説くのであれば、借金を増やさずにどう捻出できるかを考えるべきだろう。国会議員の歳費を削ったり、政党助成金を凍結したりする方法はいくらでもあるはずだ。しかも、過去に「借金を後世に残すのか」との反対論を押し切って定額給付金を支給したのは、他ならぬ麻生政権ではないか。

 麻生政権の支持率が右肩下がりで落ち続けていた2008年秋。総選挙を翌年に控えて突然、浮上した政策が、4人家族で6万円程度の現金を配るという「定額給付金」だった。総額2兆円に上る財源は財政融資資金特別会計の準備金などを取り崩して充てることになったため、当時、「後世に借金を残すバラマキ政策」「票をカネで買う愚策」などと批判され、メディアの世論調査でも約6割が給付に反対。08年12月の参院予算委で、委員から「定額給付金は本当に有効なのか」と問われた麻生首相は、「生活者の暮らしの安心という点もあるが、目先の消費が急激に落ちつつあるので、経済を活性化する意味で大事だ」と答弁していた。

 09年1月の国会代表質問でも、将来にツケを残すとして、野党議員が定額給付金の支給を問題視したものの、麻生首相は「生活の不安にきめ細かく対処するための家計への緊急支援であり、家計に広く給付することで消費を増やす経済効果もある」などと突っぱねていたのだ。

 当時は後世に借金を残しても構わないと「定額給付金」の支給を強行しながら、今度は一転して真逆の説明をしているから支離滅裂、意味不明。それに麻生氏自身が国会で答弁していた通り、このコロナ禍は「生活の不安にきめ細かく対処するための家計への緊急支援」が何よりも必要な時ではないか。

日刊ゲンダイ
2021/01/22 17:15
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