「年末の政治特番が官邸の圧力で潰されたらしい」――。今月初旬、そんな噂が永田町で囁かれていた。

 話題になっているのはNHKスペシャル「証言ドキュメント 永田町・権力の興亡」。2009年の初回「“政権交代”誕生と崩壊の舞台裏」から、これまで6回、政局の節目に放映されてきたNスペ渾身のシリーズだ。

昨年の「最長政権その光と影」では、「政権維持が優先されるあまり、政治のモラルハザードや立法府の地盤沈下を招いたとの指摘は与党からも上がっている」と踏み込むなど、NHKには珍しく政権批判も辞さない硬派な番組で知られる。

「8年ぶりに首相が交代した今年も年末に放映予定で、現場は取材を進めていた。ところが、急に局の上層部からストップがかかったと聞いています」(NHK関係者)

 今年は政治が大きく動いた一年だった。新型コロナに翻弄され、アベノマスクをはじめとする政府の失策、検察庁法改正案に世論の批判が高まり、安倍前首相が突然の辞任。“石破潰し”の総裁選を経て菅政権が誕生……。まさに「権力の興亡」が繰り広げられ、特番の放映は絶好のタイミングだ。

 本当に、決まっていた特番が中止になったのか。日刊ゲンダイが12月8日にNHKに問い合わせたところ、「放送予定が確定した番組以外は、お答えしていません」(広報部)とのことだった。

質問したキャスターには降板説も
 そんな中、17日発売の「週刊文春」が、〈「十一月十八日には年末恒例のNHKスペシャル『永田町・権力の興亡』の放映中止が急遽決定しましたが、首相から出演拒否の意向が伝えられたことがキッカケだとされます」〉というNHK報道局員のコメントを紹介している。

 臨時国会の冒頭、10月26日に所信表明演説を行った菅首相は、その夜のNHK「ニュースウオッチ9」に生出演。学術会議の任命問題について繰り返し聞かれ、「説明できることとできないことってあるんじゃないでしょうか」とキレていた。


 放送後、事前の質問項目に学術会議の話はなかったとして、内閣広報官がNHKに抗議したという話が広がっている。

 文春によれば、官邸のイラ立ちに上層部は慌てていたといい、学術問題について質問した有馬嘉男キャスターの降板が取り沙汰されているという。

「受信料値下げの圧力も高まる中で、上層部の官邸に対する忖度はますます加速しそう。現場には不満もあります」(前出のNHK関係者)  

 そのうち菅礼賛の特番が放映されかねない。

日刊ゲンダイ
2020/12/18 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/282803