馬毛島(まげしま)買収交渉の裏で、当時は自民党総務会長だった加藤勝信官房長官と面会を重ねた親密企業が売買成立によって丸儲け。「週刊新潮」11月19日号の記事について国会で追及され、親密企業によるパーティー券購入を認めた加藤氏。さらに「口利き」の状況証拠も揃っており……。

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馬毛島買収の経緯

 パンドラの箱が開いた――事情を知る関係者からはそんな声も上がっている。

 疑惑の舞台は、鹿児島県・種子島の西方約12キロの場所に浮かぶ無人島、馬毛島である。疑獄事件の疑いが持ち上がったり、使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設計画が浮上したり、常に人間の欲望に翻弄され続けた「利権の島」。2011年には日米外務・防衛閣僚会合(2+2)の共同文書に、米軍空母艦載機の発着訓練(FCLP)の候補地として明記され、防衛省が買収に乗り出した。にもかかわらず折り合いがつかない状況が長く続いたのは、地権者が一筋縄ではいかない人物だったからである。

 島の99%以上を保有してきた「タストン・エアポート」社の立石勲氏。あくまで売買での契約を求める防衛省に対し、賃貸借契約を求めた勲氏はその一方で、「馬毛島が高額で売却できたあかつきには……」などと言ってさまざまな人物や会社から借金を重ねた。その中には広域暴力団の元組長までいたのだから、防衛省が交渉に二の足を踏んだのも無理はない。さらに、勲氏が売買での契約を了承してからも膠着状態が続いた大きな要因は、島の土地の評価額である。17年に防衛省が提示した額は45億円。一方の勲氏は独自に整備した滑走路などを加味して400億円を提示。実に10倍近い開きがあり、歩み寄りは不可能とみられていた。しかし、最終的に両者は合意に至るのだ。

 タストン社と防衛省が160億円で馬毛島を売買する仮契約を結んだのは19年1月。その約10カ月後にはほぼ同じ金額での売買に正式合意し、当時は官房長官だった菅総理が発表した。元々は45億円だった防衛省側の土地評価額は、いかにして160億円まで引き上げられたのか。週刊新潮が報じたのは、その舞台裏を物語る「証拠」である。

 16年6月にタストン社と専属専任媒介契約を結んで、馬毛島売買の「仲介者」となったのは東京・新橋にある不動産会社「リッチハーベスト」(以下、リッチ社)。後述するが、島を巡りすでに億単位の利益を手に入れている。それに飽き足らず目下、タストン社を相手取り、馬毛島の売買代金160億円の3%、約5億円を仲介手数料として支払うよう求める民事裁判を起こしているのだ。リッチ社は、裁判の証拠として「面談記録」を提出している(掲載の表参照)。それを見ると、防衛省側の土地評価額が45億円から160億円に引き上げられていったのと同時期にリッチ社が、当時は自民党総務会長だった加藤官房長官と4度も面談していることが分かるのだ。また、同社は菅総理の懐刀である和泉洋人総理大臣補佐官とも3度面談している。

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週刊新潮 2020年11月26日号掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/12010556/