日本学術会議が推薦した会員候補のうち6人を菅義偉(よしひで)首相が任命しなかった問題で、候補だった早稲田大の岡田正則教授ら4人が23日、外国特派員協会(東京都千代田区)で記者会見し、口々に任命拒否を批判した。岡田教授は「私の専門は行政法学。私の専門分野から今回の任命拒否問題を見ると以下の3点から、違憲違法と言わざるを得ない」と述べ、6人を任命するよう訴えた。

 岡田教授は「第1に今回の任命拒否は学術会議の独立性を否定する。学術に対して、政治権力が距離を保つべきことを学術会議の組織的な独立性として学術会議法は定めている。会員の適否を政治権力が決められるということになれば、学術会議の独立性は破壊されてしまう」と指摘。学問の自由を保障する憲法23条に違反すると述べた。

 「第2に、学術会議法7条と17条に違反している」と説明。「政府はこれまで任命拒否を行うことができないとの見解を国会で繰り返してきた。ところが、今回突然菅首相らは憲法15条1項があるから、自分たちは任命拒否もできるんだと説明を始めた。しかし、国民が学術会議法を通じて会員の選定罷免権を委ねているのは、学術会議という組織であって、総理大臣ではない」と指摘した。

 さらに、「第3に、今回の任命拒否は手続き的上も違法だ」とした。「菅首相は、今回の任命決定において『学術会議から提出された名簿を見ていない』と明言した。そうすると、今回の任命拒否は学術会議からの推薦リストに基づかない判断だったということになる。これは学術会議法7条2項の規定に明らかに違反する行為だ」とした。

 そして、「現状は会員の任命を99人に留めるという総理大臣の職務懈怠(けたい)によって違憲違法状態にある。菅首相は職務懈怠をやめて推薦に基づく6名の任命義務を履行し、この違憲違法状態を速やかに解消しなければならない」と訴えた。

戦前の教訓踏まえた「学問の自由」

 同じく会員に任命されなかった東京慈恵会医科大の小澤隆一教授(憲法学)もオンラインを通じて会見に参加した。

 小澤教授は、戦前の憲法に学問の自由がなく、軍国主義化の流れの中で「政治に従属して戦争遂行に動員され、日本はアジア太平洋戦争に突入した」と歴史を紐解き、「こうした戦前の苦い教訓を踏まえて、戦後制定された日本国憲法は思想・良心の自由、信教の自由、表現の自由に加えて、23条で学問の自由はこれを保障すると定めて、明治憲法になかった学問の自由を明確に保証することになった」と続けた。

 その上で、「日本学術会議はこの学問の自由の保障を受けて、我が国の平和的復興、人類・社会の福祉に貢献し、世界の学会と提携して学術の進歩に寄与することを使命として設立された。政治権力に左右されない独立の活動によって、政府と社会に対して学術に基礎づけられた政策提言を行うことをその職務としている」と述べ、「今回の任命拒否はこうした学術会議の目的と職務を大きく妨げるものであり、一日も早く撤回されなければならない」と締めた。

THE PAGE
10/23(金) 15:11配信
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