「菅さんにドンドコドンドコ言われてさー」。酔った勢いで上司への愚痴をこぼすなどありふれた光景だが、この発言の主は現職大臣。つまり、話に出てくる「菅さん」とは、首相の菅義偉氏に他ならない。

 東京・恵比寿にある瀟洒なフレンチレストランでウイスキーのロックを呷っていたのは平井卓也・デジタル改革担当相(62)。菅首相肝煎りのデジタル庁新設を託された目玉大臣だが、この日は同僚議員を相手に少々口がなめらかになっていたようだ。

「事務所に菅さんから電話が入って『大臣頼む』って一言。冗談かと思ってすぐに電話かけ直したよ」

 と就任時のことを誇らしげに語り出したのもつかの間、冒頭の愚痴が飛び出した。

「菅さんマジ厳しいぜー……世間を味方に付けて立ち上げたもののさ……政務官が使えないんだよね……」

 半個室の外にまで漏れ聞こえるほどの声量だった。

 ちょうどその日(9月29日)の昼、平井氏はデジタル庁のスローガンを「ガバメント・アズ・ア・スタートアップ」に決定。会見で「略称は(頭文字をとると)ガースーとなる」と首相の愛称でゴマをすったが、夜になると「俺の遊びだけど。ガースー、ハハハハハ」といじっていた。

 もっとも、赤ワインのグラス片手に聞き役に徹していた同僚議員のほうが、ストレスは上のはず。林芳正・参院議員(59)である。

 林氏といえば、二階派幹部の河村建夫・元官房長官の選挙区(山口3区)への鞍替えが報じられたことが二階俊博・幹事長の逆鱗に触れ、「売られた喧嘩は受けて立つ」と啖呵を切られたばかり。

 平井氏の話に頷くばかりで愚痴ひとつ言わない林氏だが、あえて言わないのか、それとも言えないほどの苦境なのだろうか……。

 同じ岸田派に所属する2人には、音楽好きという共通点もある。平井氏はギター、林氏はピアノを得意としており、2人でのセッションを動画配信したこともある。

 両氏の事務所にこの日の会合について聞いたところ、「日程に関しては公表しているものを除き、外部からのお問い合わせには回答しておりません」とお揃いの回答。党内に“不協和音”が起きないことを祈る。

※週刊ポスト2020年10月30日号
10/16(金) 7:05
https://news.yahoo.co.jp/articles/154a46f15138975085dac87ac9b996014a065cda