財務省の森友公文書改ざん事件を巡り、上司に改ざんをさせられたことを苦に命を絶った近畿財務局の職員、赤木俊夫さん。その妻、赤木雅子さんが国などを訴えた裁判が大阪地裁で行われている。以下は、裁判当日の赤木さんの独白だ。

〈けさ(10月14日)夫の死を巡る裁判がある日。夫の書斎に入った。普段は気が重くなるから入らないんだけど、久しぶりに入って棚にびっしり入った本を1冊何気なく手に取った。そしたらバタバタっと本が雪崩のように崩れ落ちてきた。あ〜あ、朝から何やってんのかなあと思いながら本を片付けていたら、写真が1枚落ちているのに気づいた。本の間に挟まっていたようだ。それは……。

 夫のお母さんの写真だった。1987年(昭和62年)2月、国鉄の分割民営化直前。国鉄から旧大蔵省(今の財務省)への転職が決まっていた夫が、両親に北海道旅行をプレゼントした写真だ。夫はお母さんが好きだった。

 5年前、お母さんが亡くなった時、夫は実家からこの写真をもらってきた。きっとその時に本に挟んだまま忘れてしまったんだろう。2年前、夫は自ら命を絶つ前に、この写真を探していたけど見つからなかった。それが、夫の死の真相を巡る裁判のその日に、こんな偶然で見つかるなんて。

 これはきっといいしるしだ。きょうの裁判にはこの写真を持っていこう。夫と夫の母が見守ってくれている気がする〉

国は「改ざんの経緯や内容などの事実は必要ない」

 赤木さん側は、夫の死の真相につながる情報の提供を国に求めた。ところが国は「損害賠償のためには、改ざんの経緯や内容などの事実は必要ない」と、回答を拒否してきた。

 きのう13日、2回目の裁判を前に開かれた弁護団会議の席で、弁護団から改めて国の回答について説明があった時、赤木雅子さんは思わず涙ぐんでつぶやいた。

「ひどすぎます。夫がかわいそうです」

 そこで、この赤木さん本人の思いを法廷で直接訴えてもらうのが効果的ではないかとの考えから、急きょ、赤木さん本人の法廷での意見陳述が決まった。前日の申請にも関わらず、裁判官もこの申請を認めた。そしてきょうの裁判。被告席に国の代理人の訟務検事や財務省、財務局の担当者がずらりと10人以上も並ぶ中、赤木さんは原告席から対面する被告席に向かって意見を読み上げた。以下、全文をご紹介する。

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文春オンライン
2020/10/14
https://bunshun.jp/articles/-/40896