https://mainichi.jp/articles/20200921/k00/00m/040/061000c
 「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」。安倍晋三前首相はこう宣言して7年8カ月で80回以上の外遊を繰り返したが、辞任表明の記者会見では拉致問題が進展しなかったことなどを挙げ、「痛恨の極み」と総括した。「国内世論向けに外交を利用した」と分析する政治学者の姜尚中さん(70)に、安倍外交の「レガシー」について聞いた。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】

 ――安倍政権が終わりました。振り返ってみてどんな政権でしたか。

 ◆安倍政権の特徴は、選挙と外遊の多さです。首相の専権事項として解散総選挙を乱発し、国民に分かりづらい争点を掲げる。低投票率で圧勝することで全権委任を得たとして、選挙で争点にならなかった政策を実行していきました。国民を政治から疎外した状態が恒常化しましたが、政権にとってはむしろ好都合だったでしょう。

 外交では、これほど外遊を繰り返した首相はいなかったと思います。森友・加計問題や桜を見る会など、自身が国会などで追及され都合が悪くなると外遊に出ていました。支持率を上げるために、外交がかなり利用された側面があります。

 ――特に外交面はどのように評価しますか。

 ◆外交は相手があることなので100%マル、100%バツとは言えませんが、実のある成果は…