SNS等を使って政治的発言をする芸能人が増えている。中でも話題なのは、「#検察庁法改正案に抗議します」ムーブメントで注目を浴びた小泉今日子(54)だろう。小泉が共産党の機関紙「赤旗」で対談したことを機に共産党から出馬するのではと報じられ、4日に「あの記事を信じてる人がたくさんいることに驚いている」と出馬を否定するツイートを発信。その後もSNSを中心に若者から中高年世代まで“キョンキョン政界進出待望論”が盛り上がっている。

 芸能界が政治にふれるようになった大きなきっかけは、4月の自粛期間中に起きた、星野源「うちで踊ろう」事件だ。安倍晋三首相(65)が豪華な自宅で犬と戯れ、お茶を飲む“勘違いコラボ”動画をアップし、善意のコラボリレーがストップ。星野は「僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません」とコメントした。同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏がこう言う。

「内容を理解せずに平気でエンタメを冒涜する人物がこの国の首相だということが政治に危機感を抱かせた。エンタメを政治利用しようとしており、損害賠償を請求してもいいくらいの内容。むしろ“無言のアンチテーゼ”に星野さん側の強い憤りを感じます。こういった件を機に、タレントが政治に警鐘を鳴らす存在になってきたことは、日本のエンタメが世界基準に近づいてきている点では喜ばしいことです」

小泉純一郎氏と安倍首相の違い

 小泉純一郎氏(78)も首相時代にX JAPANのライブ観賞や、テレビ出演していたが、安倍首相とは印象が異なる。

「小泉元首相の場合は、エンタメ好きがにじみ出ていて、リスペクトが感じられた。それに比べ、今回は“あざとく利用する”ことに終始してしまった。背景にはエンタメに対する認識の低さ、つまり、見下しがあると思います。その昔、上岡龍太郎さんが『芸人から政治家に転身して成功する人はいても、政治家から芸人になって成功したやつは皆無だ』と言って、エンタメの世界がいかに高尚かつハードであるかを表現しましたが、その意味がわからなかったのか。ある意味、安倍首相の“皮肉な功績”といえるでしょう」(前出の影山氏)

 エンタメを都合よく政治利用させないためにも声を上げ続けるしかない。

日刊ゲンダイ
20/09/15 06:00
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/278700