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 安倍晋三首相の退陣により、懸案の皇位継承問題も次期政権へ引き継がれる。

 自民党総裁選では「女系天皇」について、石破茂元幹事長が容認の可能性に言及。一方、政権中枢で首相を支えてきた岸田文雄政調会長、菅義偉官房長官は「男系継承」の伝統を重視する立場から慎重な姿勢を示しており、議論が停滞する可能性もある。
◇男系維持か女系容認か
 皇室典範は「皇統に属する男系の男子」が皇位を継承すると規定。現在該当するのは、天皇陛下の弟の秋篠宮さま(54)、その長男の悠仁さま(14)、陛下の叔父の常陸宮さま(84)の3人のみで、有資格者の減少が懸念されている。

 国会は2017年に上皇さまの天皇退位を認める特例法が成立した際、付帯決議で「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」を検討するよう政府に要請。最大の焦点は、女性皇族の天皇即位や、母方のみ天皇の血筋につながる女系天皇を容認するかどうかだ。

 小泉内閣の有識者会議は05年に女性・女系天皇を提言したことがある。しかし、安倍政権を支える保守層は「男系維持」を主張。女性天皇にも反対論が強いため、安倍政権下で本格的な検討は行われなかった。

 総裁選候補3人のうち、この問題で最も積極的に発信しているのは石破氏だ。出馬に際してのインタビューで「皇室がなくなったらどうするんだと真剣に考えねばならない」と天皇制存続に危機感を表明。男系の女性天皇は「当然あり得べしだ」と提起し、女系についても「選択肢は排除されるべきではない」と踏み込んだ。

 男系の女性天皇は江戸時代まで8人いた。再び認められると、天皇皇后両陛下の長女で男系に属する愛子さま(18)が継承権者に加わる。ただ、女系を認めない限り、次の世代に移る際に継承問題が再燃する可能性があり、女系容認論はそうした問題意識に基づいている。

 ◇伝統と「国民の合意」
 これに対し、岸田氏は歴代天皇が男系で継承されてきたとされる「伝統」を重視する。「私は男系天皇の継承に歴史と重みを強く感じている一人だ」と強調。菅氏も「男系継承が古来、例外なく維持されてきた重みを踏まえながら慎重かつ丁寧に検討を行っていく」との政府見解を引用し、女系容認に慎重な立場をにじませた。

 菅氏は「まずは天皇即位に伴う行事がつつがなく行われるよう全力を尽くす」とも語り、年内にも執り行われる秋篠宮さまの「立皇嗣の礼」が終わるまで、議論を先送りする考えを示す。安倍首相は過去に「長い歴史の中で女系天皇は存在しなかった」として男系維持を主張したことがあり、菅氏もこうした見解を共有しているとされる。

 一方、今回の総裁選で菅氏支持を真っ先に打ち出した二階俊博幹事長は、昨年11月の記者会見で「男女平等、民主主義の社会だ。それを念頭に置いて考えていけばおのずから結論は出るだろう」と発言。女性・女系天皇に前向きと受け取られ、波紋を広げた。

 総裁選で本命視される菅氏はこれまでの記者会見でも「さまざまな意見があり、国民のコンセンサスを得るため十分な分析と検討が必要だ」と述べており、「菅政権」発足後、議論が前進するかは不透明だ。 
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