政府系の日本政策投資銀行が、日産自動車に政府保証付きの融資を実施していた。スクープした朝日新聞(7日付朝刊)によると、融資はコロナ禍で資金繰りが悪化した企業に対する「危機対応融資」。金額は1300億円で、返済が滞った場合、8割に当たる約1000億円を国費で補填することになるというから驚きだ。

 朝日新聞によると、政投銀はコロナ関連で147件の危機対応融資を実行したが、政府保証付きは日産の1件のみ。SNSでは〈なんで助けるの〉〈あり得ない〉などと怒りの声と同時に、〈官邸案件?〉との指摘も上がっている。実際、日産と菅官房長官が近い関係なのは間違いない。


 日産は2000年にゴーンが取締役社長に就任した後は、霞が関からの天下りを受け入れていなかったが、18年6月、経産省出身の豊田正和元審議官を役員として迎えている。この時期は、ちょうど日産がゴーン事件の社内調査を行っていた時期だ。

「日産としては、ゴーン排除による業績悪化など不測の事態に備えるため、経産省OBを迎え入れたとみられています。政府のバックアップを狙った天下り人事との見方が強い」(業界関係者)

 つまり、今回の政投銀の異例の融資は、事前に日産―政府間で話をつけていた可能性があるということだ。さらに疑いの目が向けられているのが、次期首相に就任確実といわれる菅官房長官と日産との関係だ。

 18年11月にゴーンが逮捕された翌日、日産の専務だった川口均氏が官邸を訪問。菅氏と面会している。さらに16年5月、三菱自動車の燃費偽装が発覚し、三菱自が日産の傘下に入ると正式発表される前日にも、川口専務は官邸に赴き、菅氏と会談している。菅氏はその場で「三菱自の問題は、あってはならない」などと発言したと報じられている。一民間企業の幹部がわざわざ官邸に出向くのは珍しいことだ。今回の政府保証は、「菅案件」なのか。経済ジャーナリストの井上久男氏はこう言う。

「日産本社や多くの下請け企業は、菅長官の選挙区内にあります。日産と菅氏が近しい関係性にあるのは間違いないでしょう。業績悪化など日産に万一の事態が起きた場合、政府及び菅氏の経済政策に批判が集中することになる。そんな日産への巨額融資に、なぜ政府保証をつけたのか。首相に就任するのだとしたら、菅氏は政府として説明責任を果たす必要があるでしょう」

 特別扱いだったのかどうか、きちんと説明すべきだ。

■元COOも報酬隠し提案か

 巨額の役員報酬を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕、起訴され、保釈中にレバノンに逃亡した日産元会長のゴーン被告をめぐる事件で、検察が同社の志賀俊之・元COO(最高執行責任者)や小枝至・元相談役らも報酬隠しを提案していたと公判で主張することが分かった――と8日の朝日新聞が報じた。

 東京地検特捜部は2018年11月、ゴーンと元代表取締役のケリー被告を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕。そろって起訴したものの、ゴーンは19年末にレバノンに国外逃亡した。

 記事によると、志賀氏らは報酬隠しの実行行為には関わっていないとして刑事訴追を見送ったとみられるといい、朝日記者の取材に対し、志賀氏は「私は違法行為に加担していない」と答えたという。ゴーン逮捕当時、志賀氏は「世界中が注目していることなので、(ゴーンは)捜査に協力してほしい」などと話していた。

日刊ゲンダイ
2020/09/08 13:20
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/278414/