政府の観光支援策「Go To トラベル」に参加登録した宿泊事業者が全体の4割強にとどまっていることが観光庁への取材で分かった。制度の複雑さから登録は大手が中心で、中小の登録が進んでいない。新型コロナで特に打撃を受けた中小事業者が支援を受けられない可能性がある。観光庁は参加を促す体制を拡充し、21日の登録締め切りを過ぎても申請を受ける方向で調整を始めた。(森本智之)

◆国、申請延長へ調整

 7月22日の事業開始から間もなく1カ月だが、観光庁によると8月17日現在で登録済みは約1万6300事業者。全国約3万5000事業者の半数に満たない。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)によると登録は大手のホテルや旅館が中心という。

 大手は、旅行代理店などを通じて宿泊予約を受けるケースが多く、給付申請など一連の事務手続きは代理店が担う。だが、代理店と取引のない中小は自前で事務手続きする必要がある。

 志摩市観光協会(三重県)の西崎巳喜専務理事は「小さい宿泊業者の利用を想定していない大手を相手にした制度だ」と指摘する。代理店を通さず直接予約を受ける場合、不正請求を防ぐため、国の承認を得た企業などの第3者に宿泊データを渡してチェックを受ける仕組みだ。その分手続きが複雑になり、多くの中小事業者を悩ませる。

 全旅連の加盟者約1万6000のうち6〜7割は中小で、「家族経営も多く、人手が足りずハードルが高い」(清沢正人専務理事)という。静岡県下田市の民宿経営者は「制度について問い合わせようにもコールセンターにつながらない。申請書は取り寄せたが手続きできない」と漏らす。

 「Go To」を巡っては感染拡大を助長しかねない懸念がある一方で、観光宿泊事業者からは「借りられるだけ借金してしのいでいる。1人でも多くのお客さんに戻ってきてほしい」(神奈川県箱根町の旅館)という期待も根強い。

 こうした声を踏まえ、観光庁は6日、すべての宿泊事業者に登録申請の案内文を郵送。コールセンターも従来の100人単位の規模から1400人に増強した。

東京新聞
2020年8月19日 06時00分
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