沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設に伴う軟弱地盤の改良工事を巡って、防衛省が、焦点となっている最深部の海底地盤で強度計算に使った入力データを把握していないことが分かった。強度不足と指摘される地盤のデータを十分に精査しないまま、県に設計変更を申請していたことになる。「建築可能」の根拠が検証できない。

 本紙は2月以降、同省を通じ、調査した業者に入力データの提示を求めているが回答はない。

 防衛省が把握していなかったのは、地盤の軟らかい粘土層が最も深い海面下90メートルまで達している「B27」地点の強度算出に必要な計測値や係数といった入力データ。

 防衛省は地盤を固める改良工事の検討に当たり、調査した委託業者から強度のグラフを受け取った。このグラフには縦軸に深さ、横軸に強度の目盛りがあり、おおよその強度は分かるが、入力データなどは記されていない。防衛省はこうしたデータなどについて「承知していない」としている。

 防衛省は70メートルまで地盤改良すれば「施工可能」としているが、グラフを見る限りは、深さ80メートル付近までが軟弱なようにうかがえる。防衛省はこのB27地点での実測データなどを設計に採用せず、最長で750メートル離れた3地点の試験結果から、B27地点の強度を推定。90メートルまで改良しなくても建設は可能と結論付けた。

 防衛省は4月、軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更を沖縄県に申請した。(中沢誠)

東京新聞
2020年8月2日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/46434