政府が新型コロナウイルス対策として介護施設に対し、国民に配布した布マスク(通称「アベノマスク」)を約8000万枚配布する方針を示し、野党から「税金の無駄」との激しい批判を浴びている。

 発端は28日、国会内で開かれた立憲民主党など野党4党のヒアリング。この場で厚生労働省は布マスクについて、7月30日から介護施設に配ることを明らかにした。政府によると、約8000万枚のうち約2200万枚は5月までに発注を終え、残り約5800万枚はマスクメーカーなど14社に6月22日に発注したという。立憲議員の調査では、14社への契約金額は計約82億円。マスクの製造は終えているが、介護施設などに配れば、郵送費など十数億円が追加費用として必要になる。

 ヒアリングで立憲の大串博志氏は「6月22日の段階で、マスクは町中にたくさんあった。政府が予算を使って8000万枚も布マスクを調達して配ることは本当に必要なのか」と批判。無所属の柚木道義氏も「現場は布マスクを求めていない。みんな不織布マスクを使っている」とたたみかけた。

 厚労省の担当者は「今後の感染拡大も視野に入れ、まだまだニーズがあるだろうと判断した」と説明したが、「不織布マスクが市中に出回っている中、何を根拠に判断したのか」と問われると、答えに窮する場面もあった。

 アベノマスク事業により、これまでに介護施設に布マスク約6000万枚が配布されている。従事者や利用者1人につき3枚ずつ行き渡る計算だ。8000万枚を追加で配ると、1人あたり7枚となる。

 共産党の志位和夫委員長は28日の記者会見で「現場で一番求められているのは(高機能マスクの)N95だ。今やるんだったら、きちんとしたマスクを医療、介護従事者に届けることだ。現場に即した支援が必要ではないか」とアベノマスクの追加配布に疑問を呈した。【宮原健太】

毎日新聞
2020年7月29日 07時30分
https://mainichi.jp/articles/20200729/k00/00m/010/004000c