「東京にエピセンターが発生しており、今、全力で食い止めないと、ミラノやニューヨークの二の舞いになる」――。16日、参院予算委員会(閉会中審査)に参考人として出席した東大先端科学技術研究センター名誉教授の児玉龍彦氏の陳述に委員会室は静まり返った。

 児玉氏は、欧米に比べて東アジアの感染が抑えられているのは、過去にアジアの人の間で新型コロナに似たウイルスに感染したことで獲得した「交差免疫」と各国のエピセンター潰しを挙げた。エピセンターとは、無症状の感染者がスプレッダー(感染を広げる人)となり、感染を増やす震源地のこと。外来の感染者から特定の集団が感染するクラスターとは異なる概念だ。

 無症状のスプレッダーを封じるには徹底検査が必要。1つのエピセンターの制圧には20万件以上のPCR検査が相場だ。韓国では宗教団体のエピセンターが発生すると、一挙に検査体制を整備し、約20万人の信者にPCR検査を実施した。シンガポールでは、外国人労働者の寮の“震源潰し”に30万件の検査を行った。6月に起こった中国・北京の食品市場のエピセンターは、22万件の検査で抑えようとしているという。

「東京にエピセンター。来月は目を覆うようなことになる」

 児玉氏が地方自治体に出向き、ウイルスのゲノム配列の報告を見ると、武漢や欧米とは異なる「東京型」「埼玉型」になっているという。児玉氏は大迫力で訴えた。

「総力を挙げて責任者を明確にして、トップダウンで前向きの対策を直ちに始める。そうしないと、今日の勢いで行ったら、来週は大変になります。来月は目を覆うようなことになります。交差免疫もある東アジアの日本ならば、必ずできます」

 児玉氏の力説に、西村コロナ担当相は「私も児玉先生とも一度お話をしたいと思って連絡をとらせていただいた。以前からですね。必要なら、尾身先生にお話を伺っていただければ」と逃げ腰。

「エピセンターと呼ぶかクラスターと呼ぶかは別としてですね。(略)PCR検査を無症状の方も含めて、積極的に拡充していく。この方針で東京都、新宿区と連携して取り組んでいるところです」

 クラスターとの違いを強調する児玉氏の指摘をみじんも理解していない。西村コロナ担当相任せでは、「ウィズ・エピセンター」がずっと続く。

日刊ゲンダイ
2020/07/17 14:50
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