「73歳定年制を廃止しろ」――と、自民党のベテラン衆院議員が決起している。

 現在、自民党は「衆院比例代表候補」の選定基準を「公認時に73歳未満」としている。73歳を過ぎても小選挙区単独での立候補はできるが、党の比例名簿に登載されず、復活当選は不可能となっている。過去、海部俊樹氏、中山太郎氏、加藤紘一氏といった大物が、比例との重複立候補が認められずに小選挙区で敗れたため、落選の憂き目にあっている。

 衛藤征士郎氏(79)や河村建夫氏(77)、平沢勝栄氏(74)ら70歳を越えるベテラン議員が、12日にも下村博文選対委員長に「73歳定年制」の廃止を申し入れる。

「年齢によって区別するのは、やはりおかしいですよ。もともと個人的には、小選挙区で敗れた候補が比例で復活当選する制度には反対です。有権者が落とした候補が議員になってしまう。ただでさえ歪んだ制度なのに、年齢で区別しているから、さらに歪んだ制度になっている。定年制は廃止すべきです」(平沢勝栄議員)

 今年73歳を越える自民党議員はざっと30人、70歳を迎える議員は50人いる。二階俊博氏(81)、麻生太郎氏(79)と大物揃いだ。ベテランが決起しているのは、早ければ年内に行われる解散・総選挙が、苦戦必至だからだ。

「安倍内閣の支持率が下落し、自民党は次の衆院選では50人は落選するとみられています。野党候補が一本化したら、これまで小選挙区で勝利してきたベテラン議員も危ない。だから保険となる比例復活が欲しいのでしょう。実際、ベテラン議員の多くは小選挙区で負けても接戦になりそうなので、惜敗率が高くなり、復活当選するはずです」(自民党関係者)

 このタイミングでベテランが決起しているのは、安倍1強が崩れはじめた裏返しという解説も流れている。

「もし、安倍1強が盤石だったら、安倍さんに反旗を翻すような動きは起きなかったかもしれない。党の規則にノーを唱えるわけですからね。この先、党内抗争が激しくなる可能性がある。安倍さんは、50人いるベテランを敵に回したくないはず。ベテラン議員が“いまがチャンス”と考えてもおかしくありません」(政界関係者)

 定年を廃止したら、その分、比例復活の確率が低くなる若手が怒りの声を上げるのは間違いない。一波乱あるか。

日刊ゲンダイ
2020/06/12 14:50 
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